本研究では、2011年3月に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故によって、全町避難を強いられた2つの自治体、すなわち福島県双葉町と楢葉町を主たる対象とした。2つの自治体は同じく原発避難をした自治体ではあるものの、その後の避難指示解除と復興には大きな違いがある。楢葉町は、第一原子力発電所から20㎞圏内に町の一部が入るものの、放射線量が比較的低かった。そのため、比較的早期に避難指示が解除された。もう一方の双葉町は、原発が立地する自治体であり、避難指示区域指定の部分的解除が他の自治体と比べて最も遅かった。2つの自治体の原発避難者、また楢葉町については避難指示解除後の楢葉町への帰還者を対象として、住民票を置く地域社会に関わる「共同性」の現状、震災前からの変化、課題について地域社会学の既存研究を手がかりに調査・検討した。 研究期間全体を通じて、詳細には研究されていなかった楢葉町・双葉町の住民組織・活動についての資料を、ヒアリング等にもとづいて得ることができた。それはたとえば、福祉や芸能活動を行う各種ボランタリー・アソシエーションや、自治会などの資料である。これらは、原発避難による「共同性」の変遷に関するものであり、地域社会学的な研究にとって有用なものである。また、原発事故が、いかに地域社会に被害を与えたのかについて記録する資料ともなる。 なお、最終年度はコロナ禍により遅延した、調査対象者への結果報告・還元と補足調査、補足資料の収集を行った。結果報告・還元としては、2021年度末に完成していた報告書を関係者に直接・あるいは郵送で配布した。
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