研究課題
2018年10月、東南アジア学会のシンポジウム「境界からみるアジア――宗教の中心と周縁」(北海道・東北地区特別例会)において、「インド北東部におけるムスリムの排斥」というテーマで口頭発表を実施した。ここで、平成30年度の研究計画で記した排外主義に関する先行研究のまとめの成果や、北東部における排外主義の歴史的経緯について整理した成果を発表した。これに加え、2019年1月、2月に活性化した市民権法改正運動に関する新聞記事を整理し、インド人民党主導のムスリム排斥とアッサム州において活性化する移民排斥との相違点を確認した。また、現地調査では移民の流入について問題提起を続ける組織の中心人物に対してインタビューを実施し、1980年代からの流れについて貴重な知見を得た。さらに、全国市民登録簿の実施を担う行政官やムスリム排斥について人権侵害の観点から活動する弁護士、人権活動家にインタビューを実施し、今後の調査の見通しを得ることもできた。こうした初年度の研究成果は、日本平和学会の学会誌である『平和研究』に論文として投稿するため、現在執筆中である(2019年6月提出予定)。また、全国市民登録簿の改定とその過程におけるムスリム等排斥の問題については、2019年7月にオランダで実施されるInternational Convention of Asian Scholarsの第11回大会(ICAS 11)において英語で発表予定である。全体として、初年度に予定してた課題1「インドにおける排外主義の台頭とグローバル化:インド北東部への影響を中心に」の内容を達成し、さらに次年度以降の課題の予備調査を進めることができている。
2: おおむね順調に進展している
文献調査として、インドにおける排外主義の台頭についての先行研究のまとめと新聞記事の整理を予定していたが、これらは順調に進み、一部は東南アジア学会主催のシンポジウムにおいて発表することができた。また、市民権法改正運動とムスリム拘留者の人権侵害を問う裁判など、課題申請時に予想していなかった新たな動きが出てきている。これらはSNS等を通じて情報収集を行い、年二回の現地調査によって確認することができた。現地調査は、課題1-4と分けたものの、重複するインフォーマントが複数織、計画通りに分けられない部分もある。幅広い人々と継続的に連絡を取りながら、その年の課題を念頭において聞き取り調査を実施することを心がけ、同時に来年度以降の課題の予備調査も実施することができた。
2020年度は予定通り現地調査を進めるが、以下のことに留意する。市民権法改正運動とムスリム拘留者の人権侵害を問う裁判など、新たな動きが出てきている。当初はアッサムの反移民感情とインドの排外主義が合流することを予想していたが、最近の動向ではこの二つの動きの間で差異が目立ち、むしろ乖離する傾向もみられた。そのため、ウェブジャーナルやフェイスブックを通じた同時進行の情報収集を心がけつつ、2020年度の現地調査で方向性を確認し、軌道修正を実施する。
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