研究課題/領域番号 |
18K02009
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
菅野 剛 日本大学, 文理学部, 教授 (10332751)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会調査 / 郵送調査 / 地域比較 / 社会階層 / 社会的ネットワーク |
研究実績の概要 |
まず、これまでに実施した郵送調査データの整備を行った。足立区、板橋区、品川区、世田谷区、台東区、中央区、港区等の東京地区と、その他の地域で得られた貴重なデータのサンプルサイズは5000を超えており、多様なデータ分析手法を適用できるようになっている。これらの調査では、それぞれの地域単体でもある程度のサンプルサイズを有しており、それぞれ多変量解析に耐える調査設計になっている。このため、社会階層、社会的ネットワーク、社会意識やライフスタイルの関連を地域ごとに探ることにより、首都圏を中心に格差と絆の社会的メカニズムについて、個別特殊性と共通性に焦点を定めながら、高速な計算機環境を用いて分析を進めた。 また、データサイエンスの進展により、オーソドックスな社会調査データ以外の様々な種類のデータが重要な研究対象となってきている。テキストデータはもちろんのこと、時系列のアクセスログ、音声データ、動画データ、ビッグデータなどが社会現象の把握に用いられている。社会を分析する視点についても、個人を単位として社会的属性や意識、行動を探るのではなく、集合的な現象として理解・把握するウェブ・サイエンスなどが存在する。そこで、多様で大規模なデータの処理方法について情報収集を行い、適用・応用について試行錯誤を寺田怜加とともに行った。そして寺田の大きな貢献により、正統的文化とサブカルチャーの伝播現象について、ネットワークの観点から興味深い示唆・知見が得られた。 他方で、ビッグデータ全盛の時代であるからこそ、無作為抽出に基づくオーソドックスな郵送調査の実施には一定の役割と意義があるとも言える。現時点でしか調べられないことを調査することで、格差と絆についての計量的アーカイブとしてデータの価値が高まり、ますます重要になることが期待できる。社会調査データとビッグデータとの連携をどのように行うのかが重要な課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に実施する郵送調査のための準備を進めており、基礎的な準備作業については、おおむね順調に進展している。ただ、2017年度末に文理学部旧本館建て替えに伴って研究室の移動が生じ、その後、各種資料の開梱と整理については時間がとれないままであり、あまり進展が見られていない。郵送調査による地域比較プロジェクトの実施に直接の影響はないものの、各種資料の迅速な有効利用は難しく、作業効率はよくない状況のままとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、東京の一部地域において、選挙人名簿からの無作為抽出に基づく郵送調査を実施し、データ収集と整備を行う予定である。複数地域で実施した調査データをマージして分析する際には、調査実施時期や社会情勢の違い、母集団のサイズやサンプルサイズの違い、回収率の違いなどを始めとして、様々な注意をしないと、地域比較の結果に様々なバイアスが混入することが予想される。調査を実施する一方で、これらのことに配慮しつつ、対応する手法を検討し、より効率よく、分析の精度を高めるように努める必要がある。また、データハンドリングと分析については2007年以降 R を用いており、今後も R で進めていく方針だった。しかしデータ分析を取り巻く状況は急速に変わってきており、大規模データ、機械学習、クラウドの利用、応用などを視野に入れると、Python や Julia といった言語の利用も重要となってきている。ビッグデータのクラウド環境での柔軟な利用など、社会調査データを分析するための様々な情報処理がますます重要になってくると思われるので、これらにも備えながら研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに進めており、予定通りに使用している。
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