研究課題/領域番号 |
18K02014
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
若林 幹夫 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40230916)
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研究分担者 |
田中 大介 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (10609069)
南後 由和 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (10529712)
楠田 恵美 筑波大学, 人文社会系, 特任研究員 (60875417)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 東京 / 臨海部 / 大規模開発 / 水の都・陸の都・空の都 / 流通 / ビッグネス / 都市インフラ / ジェントリフィケーション |
研究実績の概要 |
本研究は、現代の大都市を空間的および時間的な構造という点から解明し、都市の社会学の新たな理論を構築することを目的に、①東京臨海部の社会的地層・地形・イメージの重層性、②交通・流通のインフラ空間としての東京臨海部の構造、③巨大スケールの空間と施設,社会的意味、を主要な焦点する調査・研究を行なってきた。2022年度は前年度に引き続きフィールドワークと資料収集を実施したが、新型コロナウイルス感染症のため、フィールドワークは限定的な実施にとどまった。また、これまでまでに得られた資料・データをもとに、研究のとりまとめに向けた分析の検討と考察を行った。 ①・②については、東京の湾岸地域の空間がどのようにして歴史的に形成され、湾岸特有の空間や経験を生み出しているかについて、水の都(近世)→陸の都(近代)→空の都(現代)という時代区分を導入し、それぞれの時代に蓄積された地層、形成された地形、築き上げられたイメージを、土地利用と交通体系、情報ネットワーク、人の動きの重層構造という点から検討・分析した。近代港としての東京港の誕生により、臨海部は近代以降、機能空間としての姿やイメージが確立したが、その前後の時代には、江戸湊や大都市東京ベイエリアといった単なる港にとどまらない都市の複層的な姿やイメージをそこに内包していることが明らかになった。 ③に関しては、従来は一括りにされがちであった埠頭を、フェリー埠頭とコンテナ埠頭の「用途別」、1960年代の品川埠頭、70年代の大井コンテナ埠頭、90年代以降の青海コンテナ埠頭の「時代・立地別」に区分したうえで、その規模や社会的位置づけについて、産業構造の転換という切り口から整理した。この作業を通じて、埠頭という臨海部の輪郭がどのような変遷をたどって拡張し続けてきたのかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の広がりによりフィールドワークや、引き続きデータ収集のための学外での作業が制限された。このことにより、当初予定していた研究計画を完全に実施・遂行することが困難だったため、研究の進捗に若干の遅れが生じることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究とりまとめとして、これまでの調査・分析の成果を検討しつつ、研究成果の公表に向けて適宜現地調査や資料収集などの追加調査を実施しながら出版物の執筆を進める。 ①②に関しては、東京臨海エリアと横浜エリアを軸にしながら、ウォーターフロントに関する言説、経験、空間を比較分析しつつ、そのふたつの評価が分かれる背景を考察する作業を進める。 ③については、全体性を捉えがたい臨海部の巨大さは、地図を通して知覚・認識が容易になることに着目する。具体的には、東京臨海部に設置されている掲示板、行政資料、旅行ガイドブック、Googleマップなどを分析対象とし、それぞれの地図において何が必要な情報として選択され、どのような記号や図像を用いて表象されているのかを考察する。 また、東京臨海部の巨大さを捉えるうえで、「スケール」に着目し、地図と建築(模型を含む)のスケールがもたらす空間知覚および認識のあり方を比較する。 研究代表者・分担者は同じ研究組織で2023年度から、本研究の成果を受けた新たな研究課題(課題番号23K01736、空間・言説・イメージによる現代巨大都市の社会的地勢の形成と構造変容の社会学的研究)を科学研究費補助金の助成により実施することになっており、本研究課題の成果のとりまとめと新たな研究課題の計画・実施のための作業を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の広がりによって、当初予定の研究調査活動が実施できなかったために次年度使用額が生じ、研究年度を延長した。また、購入を計画した物品の納品が年度をまたいでしまう可能性があったため、次年度まで研究期間を延長する必要が生じた。今年度の残額は少ないので、研究のとりまとめのための図書・物品購入のために研究費を使用する。
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