研究課題/領域番号 |
18K02015
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
湯浅 陽一 関東学院大学, 社会学部, 教授 (80382571)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 負の遺産 / 高レベル放射性廃棄物 / 廃炉 / 財政破たん |
研究実績の概要 |
論文「負の遺産とサステイナビリティ-負の選択ゲームと構造責任」(『サステイナビリティ研究』vol9:119-132、2019年3月)を執筆した他、学会報告「What Prevents the Work of a Voluntarism Approach to the Radioactive Waste Issue? : A Local Government’s Strategy in Japan」(XIX ISA World Congress of Sociology, Toronto, 2018年7月17日)、「Impact of Nuclear Phase-out to host communities」(22nd Reform Group Meeting、Salzburg、2018年8月27日)などを行った。論文においては、高レベル廃棄物最終処分場の立地、原発の廃炉という原子力エネルギー関連の問題と、北海道夕張市や青森県大鰐町などの財政破たんに至った自治体のケースを取り上げ、負の遺産と構造責任をキーワードとした分析を行なった。とくに、高レベル放射性廃棄物や巨額の自治体債務などの負の遺産の処理において、自らの選択にもとづいていることを根拠に自治体に多くの責任が負わされていることをふまえ、選択肢を設定した上位の経営体である政府の責任について、構造責任を鍵概念として分析した。学会報告のうち、前者では、高レベル放射性廃棄物最終処分場の立地問題を取り上げ、原発立地の経緯から関連する自治体間に階層性が生じており、そのことが立地の大きな妨げになっていることを指摘した。後者では、廃炉となる原発が増えているなかで、とくに財政面で原発に依存している自治体においていかなる影響が生じうるのかを検討し、とくに人口規模の小さな自治体であるほど影響が大きく将来の見通しが不安定であることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過年度から助成を受けてきた分の成果も集約する形で、高レベル放射性廃棄物処分場の立地問題と、日本の地方財政制度との関連に焦点を合わせた論文を英文により作成中であり、英文学術雑誌への投稿の準備を進めている。論文はほぼ完成しており、夏までの時期に投稿できる見込みである。現地での調査は継続的に進めており、2018年度は愛媛県伊方町などでの調査を実施した。引き続き、研究計画にもとづく形での調査を進めていける見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
データ収集のための調査を実施する原子力関連自治体については、社会状況の変化や比較研究のためのデータ精度の観点から、適宜、対象や調査実施順序を入れ替えるが、研究計画の遂行に大きな変更はない。また、2019年秋には東アジア地域を対象とした国際学会への参加を予定している。台湾や韓国の研究者との交流は継続しており、各地での調査に向けた準備を具体化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度中に参加を計画している国際学会について、助成期間開始後に開催時期の変更がなされた。渡航費用が増加することが懸念されたため、2018年度中の図書の購入など物品費の支出を抑制した。
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