研究課題/領域番号 |
18K02015
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
湯浅 陽一 関東学院大学, 社会学部, 教授 (80382571)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 原発立地自治体 / 基金と地方債 / 投票行動 |
研究実績の概要 |
2019年度は、1本の論文を執筆し、2度海外で報告を行った。論文「基金と地方債からみた原発立地自治体財政の現状ー2009年から2017年までのデータを対象に」(関東学院大学人文学会紀要第141号:67-86)では、福島県内を除くすべての原発立地自治体を対象に、一人当たりの基金額と地方債の残高の状況について分析した。財政に関する指標は単年度の状況を示すものが多いが、基金と地方債の増減は自治体財政の累積した状況を分析できる。分析の結果、基金額が多く地方債残高が少ないという豊かなところと、基金額が少なく地方債残高が多いという厳しいところがみられたが、人口が少ない自治体ほど豊かであり、多いところほど厳しいという傾向がみられた。学会報告は、How does the nuclear phase-out influence nuclear host municipalities?(14th Conference of the European Sociological Association 2019、2019年8月22日、Manchester)と、How can we mitigate impacts of nuclear phase-put to nuclear host municipalities?(The 6th ISESEA、2019年10月27日、Seoul)を行った。前者の報告では、北海道泊村と近隣の地域、および福島県双葉町を対象に財政データの分析を行い、原発立地に伴う財政収入がいかなる形で自治体に影響を与えるのかを検討した。泊村は原発立地自治体の中でも最小の人口規模であり、顕著な恩恵を受けている。双葉町も同様に恩恵を受けたが、その効果は一時的であり後に早期健全化団体となっている。後者の報告では、泊村および近隣の地域を対象に、参議院選挙の投票データの分析を行った。その結果、原発を推進している政党への支持が伸びるといった傾向は見出せず、原発立地に伴う財政状況の好転が投票行動に与える影響をはっきりと確認することはできなかった。投票行動は地域によって若干の違いがみられたが、それらは人口規模の違いによる影響が大きいものと判断される結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
10月と2月に予定していた海外での研究発表と海外調査を、それぞれ台風による飛行機の欠航と、コロナウイルスの拡大の影響により、中止した。3月にも国内での調査を計画していたが、出張伺書を提出する前に取りやめている。これらの発表や調査については、実施可能な状況になり次第、別の機会での研究報告や同内容の調査を行う。ただし、これらの期間中にも、これまでに収集したデータの分析や論文の執筆等は行っており、研究そのものは進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルス拡大の影響により活動が制限されている状況下では、メールや郵便等で各自治体の財政担当部署や選挙管理委員会等に問い合わせながら、不足しているデータの収集を進めている。これらのデータについては、入手次第、分析を行って行く。中止となった調査については、制限が解除されたのち、適切なタイミングをみて実施していく。学会報告についても、すでにエントリーしてる分を含めて、可能な場を探して、順次報告していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
台風による航空機の欠航により、10月に予定していた海外(ザルツブルグ)での報告を中止した。また、コロナウイルス拡大の影響により、2月に台湾、3月に国内で予定していた調査を中止した。これらの分のうち、調査については、活動が可能になったのち、適切なタイミングをみて実施する。報告については、同じ学会の翌年度の場(2020年8月予定)に報告エントリーし、許可を得ているが、渡航や実施の可否は未定である。この機会も含め、他の参加可能な機会を探し順次報告していく。
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