研究課題/領域番号 |
18K02019
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
中里 英樹 甲南大学, 文学部, 教授 (10309031)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 育児休業 / 保育 / ドイツ / オーストラリア / スウェーデン / 職場文化 / パパ・クオータ / QDAソフト |
研究実績の概要 |
本研究の目的に照らして、その研究活動は、(1)日本における夫婦の子育て・家事・就労に関する分担状況とその交渉過程についての実態調査と、(2)制度・実践・文化に関する諸外国との比較に大きく分かれる。それぞれの活動について、本年度実施した内容は以下の通りである。 (1)に関しては、研究テーマの重なる別助成金を得て共同で実施した母親のフォーカスグループ、および個人インタビュー結果について、質的分析ソフトNVivoを用いて、妊娠・出産・子育てに伴う母親の就業状態の変化のありかた(育児休業の取得を含む)のタイプ別、父親の育児休業に関する働きかけとその結果について比較分析した。この調査により、地域別の保育所入所の認定プロセスとの関連に着目することなど、次年度、本研究費を用いて行うインタビュー調査の課題が明らかになった。 (2)に関しては、まず、オーストラリアの研究協力者と育児休業・ケア体制・労働規範に関する比較研究を開始し、日本で開催された国際学会Society for the Advancement of Socio-Economics大会において口頭報告を行った。また同学会の別セッション後に行った、スウェーデンの報告者とのディスカッションでは、パパ・クオータ利用の実際についての情報を得ることができた。 トロントにおいて開催されたInternational Network on Leave Policies and Researchの年次大会では、すでに比較研究を始めているオーストラリアの他、イタリア、ドイツ、スウェーデン、イギリス、リトアニアの研究者との議論を通じて、それらの制度と現状についても詳細を検討していく必要性を認識し、研究協力についての約束を得ることができた。さらに先行研究を元に、スウェーデンとノルウェーの育児休業および公的保育と日本の制度の相違について整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国外でのインタビューについては、今年度に研究協力者と相談を開始したものの、ドイツでのInternational Network on Leave Policies and Researchの年次大会参加にあわせて、2019年度に実施することに当初の予定よりも遅れることになった。スウェーデンでのエキスパートインタビューについても2018年度中に参加の決まった関連プロジェクトのミーティングにあわせて、2019年度に入ってから研究協力者へのヒアリングを行った。 日本におけるインタビューについては、別の共同プロジェクトによるインタビューを本研究のための予備調査と位置づけて分析したため、改めて2019年度に対象人数を当初の予定よりも増やして実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の予備的分析を踏まえて、改めてインタビュー調査を設計し、育児休業の取得を含む、夫婦の子育て・家事・就労に関する分担状況とその交渉過程について、待機児童数などの特徴の異なる地域の3歳までの子どもを持つ男性・女性に対してインタビューを実施する。 海外調査については、すでに4月にスウェーデンでの予備的観察調査と研究協力者へのインタビューを行った。8月はドイツで開催されるInternational Network on Leave Policies and Researchの年次大会において、オーストラリアの研究者との共同研究の報告を行い、同じくドイツにおいて子育て中の親および企業での子育て支援サポート提供企業の担当者に対してインタビューを実施する。 あわせてスウェーデンにおける当事者インタビューについても、今年度または来年度に実施できるよう、対象者へのアプローチ方法についてスウェーデンの研究者と打ち合わせを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本において実施した予備的インタビューの文字おこし等の人件費を別の共同研究の助成金でまかなうことができ、本研究のための追加調査は次年度に実施することになったこと、また海外の調査についても準備期間の必要から次年度に実施することになったことから、次年度使用額が生じた。 次年度は、今年度から繰り越した調査と当初より予定していた調査を日本および海外において行うため、本年度から繰り越した額を次年度分とあわせて使用する計画である。
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