最終年度は主に文献および史料による研究および、歴史学者との議論を中心に行った。 沖縄共同体の基盤は近世の琉球王府時代をその根底にもちながらも、むしろ近代における時代への対応の変化のなかで築いてきた要素が大きいのではないかという本研究の研究動機および仮説の検証にあたって、歴史学者との議論において近世琉球村落の特質およびその変遷を理解し、その問題意識をもって文献等を改めて読み直した。また、共同体の現状調査および5年間の定点観測によって、現在の沖縄の共同体の特質を捉えなおす試みを続けた。 本研究によって、まず明らかになったことは、近世琉球村落において、共同体の基盤となる生産性が極めて低いこと、そのために近代的共同体とはかなり異なる共同体であったことがある程度明確となった。すなわち、近代以降のいわゆる「ゆいまーる」に代表されるような協同(共同)労働や相互扶助的なものとはかなり異なり、むしろ共同といえるレベルではなかったことである。 また、近代以降に形成されていった共同体も明治以降たえず大きく変化していることが明らかになった。昭和期の高度成長期における変化のみならず、むしろ1980年代以降の変化の方が大きいといえよう。沖縄の共同のいわゆる「解体」が急速に進むのはこの時期である。一般的には沖縄は本土と比べて共同体あるいは共同体的紐帯が残っているとされているが、実は本土の他県他地域をほとんど違いなない程度に共同体は「解体」している。 本研究は主に共同売店の設立とその展開過程そしてその解体の過程を調査研究することによって沖縄の共同体の変化を見てきたが、その方法によってある程度の具体的な変化と本質的な変化を明らかにできたと思われる。
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