研究課題/領域番号 |
18K02025
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹内 里欧 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (40566395)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 都市新中間層 / 佐々木邦 / 近代家族 / 子ども / イメージ / 文明化 / 近代化 / 理想的人間像 |
研究実績の概要 |
本研究は、「大正・昭和初期都市新中間層における理想的人間像の形成と変容」というテーマについて、社会学的分析を行うことを目的に研究を行った。特に、当時の都市新中間層を素材に多くの作品を発表した佐々木邦の小説の分析を中心に行った。佐々木邦は、昭和初期を中心に人気を集めた小説家であるが、作品をとおして、都市新中間層(と予備軍)に、モダンでハイカラな生活や、「文明」的な理想的人間像のイメージを具体的に提供した。佐々木邦にかんして、私は、論文(竹内里欧2018「第2章 佐々木邦と『ユーモア小説』――都市新中間層のハビトゥスと『抵抗』戦術」稲垣恭子・岩井八郎・佐藤卓己編『教職教養講座 第12巻 社会と教育』協同出版)を執筆した。この論文においては、佐々木邦の代表的作品を紹介しつつ、佐々木邦の描く都市新中間層について分析を試みた。特に、佐々木の描く都市新中間層家庭の、一見波乱なくみえる日常生活の描写に含まれる「抵抗」に着目し、セルトーの理論などを援用しつ分析を行った。また、国際講演会発表(於中国文化大学、2019年3月23日、「越境する『朝ドラ』」における発表。ホームドラマの中の表象にかかわるもの。)、国際講演会討論(於京都大学、2018年11月1日、「Making Tea, Making Japan」における討論者。)、国際講演会討論・司会(於京都大学、2019年2月16日、「Current Globalized Society and Nationalism」における討論者および司会(英語)。)を行った(詳しくは進捗状況の欄参照)。本研究は、近代日本社会に焦点をあてたものであるが、「文明」を象徴する理想的人間像の形成と変容というテーマは、グローバルな文脈でも重要なトピックである。そのような意味で国際講演会等での議論は有意義であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究について、今年度の進捗状況を報告する。1年目である本年は、先行研究の精読、資料収集、論文の執筆、国際講演会等での発表・討論を中心に行った。先行研究の精読については、近代家族の台頭、高等教育の普及・影響という二つの側面から先行研究を整理・検討した。資料収集については、日本近代文学館、国立国会図書館、京大附属図書館等を利用し、佐々木邦が中心となって発行した『ユーモアクラブ(明朗)』、『明治学院百五十年史』等の年史、講談社社史、各種統計資料等の資料収集を行った。研究成果としては、本研究のテーマである「大正・昭和初期都市新中間層における理想的人間像の形成と変容」について、当時の都市新中間層の家庭を舞台に小説を執筆した佐々木邦について論文を出版した(竹内里欧2018「第2章 佐々木邦と『ユーモア小説』――都市新中間層のハビトゥスと『抵抗』戦術」稲垣恭子他編『教職教養講座 第12巻 社会と教育』)。また、文明化、文化ナショナリズム、階層、ドラマにおける表象といった関係するテーマについて、国際講演会発表(稲垣恭子、竹内里欧、濱貴子、佐々木基裕、花田史彦、椎名健人「現代日本の若者にとって「朝ドラ」とは何か? ――質問紙調査及びインタビュー調査から――」『越境する『朝ドラ』――その過去・現在・未来――、越境的「晨間劇」:晨間劇的過去,現在與未來』於中国文化大学、2019年3月23日)、国際講演会討論(『Making Tea, Making Japan』(クリステン・スーラック博士による講演のパネル・ディスカッションにおける討論者)、於京都大学、2018年11月1日)、国際講演会企画・司会・討論(『Current Globalized Society and Nationalism』(ペッカ・コルホネン博士による講演の討論者兼司会(英語))、於京都大学、2019年2月16日)を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画について述べる。本研究では、「大正・昭和初期都市新中間層における理想的人間像の形成と変容」というテーマについて、社会学的分析を行うことを目的に研究を行う。具体的には、大正・昭和初期を中心に都市新中間層のモダンな家庭生活を描いて活躍した小説家佐々木邦の作品に焦点をあてて分析をすすめている。 2年目は、引き続き、佐々木邦の作品の精読・分析をすすめるとともに、読者層にも焦点を当てた分析を行う。2年目の前半は、1年目に収集した資料(佐々木邦が中心となって発行した『ユーモアクラブ(明朗)』、『明治学院百五十年史』等の年史、講談社社史、『主婦之友』『少年倶楽部』等の雑誌資料、各種統計資料等)の整理・検討を行い、佐々木邦の作品や読者層についての分析作業を行う。とくに、階層をこえて形成された都市新中間層のモダンな生活への憧れについて着目する。また、佐々木邦と講談社文化との関係、高等教育の普及との関係に着目して分析作業を行う。日本近代文学館、国立国会図書館、国際日本文化研究センター、明治学院大学等に赴き、資料を適宜補充する。2年目の後半は、分析の結果をまとめ、研究会報告・学会発表(日本社会学会、日本教育社会学会等を考えている)を行う。また、本研究のテーマに近い分野における先行の研究者に批判的コメントをいただく機会を設け、議論の修正をはかり、3年目への準備とする。 3年目は、資料の補充を行いつつ、国内外での学会発表・論文投稿、最終成果報告書執筆を行う。3年目の前半は、成果報告書の草稿を執筆する。草稿をもとに、学会発表あるいは研究会発表、論文投稿などを行い、議論の修正をはかる。また、国際学会や国外の研究者を交えた研究会で議論する機会をもうけ、グローバルな文脈で本研究テーマを再検討する。以上をふまえ、最終成果報告書を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、資料収集にかんしては、部分的には、京都大学附属図書館の相互利用制度を使い行うことができ、予想よりも、出張旅費を少なくおさえられた。そのため、次年度使用額が生じた。次年度以降は、その分を、学会発表、国会図書館等での資料収集のための出張旅費などとして使用する予定である。
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