研究課題/領域番号 |
18K02025
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹内 里欧 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (40566395)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 都市新中間層 / 子ども / 佐々木邦 |
研究実績の概要 |
本研究は、「大正・昭和初期都市新中間層における理想的人間像の形成と変容」というテーマについて、社会学的分析を行うことを目的に研究を行った。特に焦点をあてるのは、昭和初期を中心に活躍した小説家佐々木邦の作品と読者層の分析である。本年度は、本来ならば、東京方面に赴き、資料収集(昨年度から、資料館の担当者の方とも連携をとりつつ資料閲覧・収集の計画をたてていた)につとめ、論文作成を行う予定であった。しかし、コロナ感染拡大にともなう様々な影響により、資料収集が難しくなり、また、現在、小さい子供の育児中であるため、休校やその後の学童利用制限(諸事情による)により、研究活動を予定どおり行うことがかなり困難となった。一方で、データベースの活用等により、ある程度研究をすすめていくことができた。学会発表(竹内里欧「「私民」の「市民」化――佐々木邦の諸作品から」第93回日本社会学会大会」)では、佐々木が提供した都市新中間層の在り方のモデルのもった意味について検討することを目的とした。佐々木の作品は、新中間層のハビトゥスを創造的に描写し憧れを喚起することにより、あるべき新中間層のあり方に読者を牽引する役割を果たした。そのような意味で、佐々木の作品は、読者にあるべき新中間層のハビトゥスを伝え、それをとおしてデモクラティックな考え方を涵養し「よき市民」へと導く暗黙の教育装置であった、といえる。 論文(竹内里欧「都市新中間層文化の生成と佐々木邦――「私民」の「市民」化の可能性」(執筆中。現在要旨提出ずみ。『『日本型』教育支援モデルの可能性(仮題)』に収録予定))では、上記の分析で得られた知見を発展し考察をこころみている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染リスク拡大にともない多大な影響(特に、小さい子供の育児中であるため、休校措置がとられた期間、通常の授業等の業務をいつものように行うこともままならぬ中、研究をすすめることはほとんど不可能であった。)をうけ、今年度は予定変更を余儀なくされた。まず、予定していた東京(国会図書館、日本近代文学館、明治学院大学等での資料収集。資料館の方と連携しつつ計画を立てていた)での資料収集活動、国際学会参加(現地の研究者と連携し計画を立てていた)等の予定をほぼ断念せざるを得なかった。また、現在育児中であるため、休校措置がとられていた期間、そして、その後も、諸事情により学童等の利用をかなり制限せざるを得なかった期間、作業を予定どおりすすめることはできなかった。そのため、科研費延長申請を行い、本研究の研究期間を1年延長することを許可していただいた。一方で、インターネット上のデータベースで資料を集めるなど、様々な工夫により、ある程度研究をすすめることもできた(学会発表: 竹内里欧「「私民」の「市民」化――佐々木邦の諸作品から」第93回日本社会学会大会」、論文: 竹内里欧「都市新中間層文化の生成と佐々木邦――「私民」の「市民」化の可能性」(執筆中。現在要旨提出ずみ。「『日本型』教育支援モデルの可能性(仮題)」に収録予定である))。コロナ感染リスク拡大にともなう様々な影響という悪条件の中での作業と考えた場合、今後にむけてある程度研究を発展させることはできた。今後は、1年の延長期間を有効に使えるよう、なおいっそうの努力をしたい。特に、資料収集が可能となった場合、東京方面におもむき、資料の補充につとめたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画について述べる。本研究では、「大正・昭和初期都市新中間層における理想的人間像の形成と変容」というテーマについて、特に、小説家佐々木邦の作品を対象に分析を行っている。本年度は、コロナ感染拡大のため、研究に大きな困難がともなった。まず、予定していた東京方面での資料収集(国会図書館、日本近代文学館、明治学院大学等)、海外の研究者との現地での連携活動は、ほぼ不可能になった。また、休校や学童利用制限(諸事情による)などにより、育児をしながらの研究活動は非常に困難であった。そのような中で、データベース等を活用し、徐々にであるが研究を進めている最中である。研究活動を1年延長することを許可いただいたので、この期間を有効に使えるように努力したい。まず、本年度は、執筆中の論文(竹内里欧「都市新中間層文化の生成と佐々木邦――「私民」の「市民」化の可能性」(執筆中。現在要旨提出ずみ。「『日本型』教育支援モデルの可能性(仮題)」に収録予定))の完成を目指す。本論文では、佐々木の作品が読者層にうながした「社会化」の機能についてさらなる考察を行いたいと考えている。また、5月に文化社会学にかんする研究会(オンライン)で、講談社文化における佐々木の位置づけについての報告を予定し準備をすすめている。オンライン研究会等を利用し、様々な分野の研究者と意見交換の機会を確保するようにする。また、状況をみて、東京方面への出張を行い資料収集、あるいは、代替的な資料収集方法の確立につとめる。海外の研究者との連携についても、オンラインを活用し意見交換を行うなど、代替的な方法を模索中である。本年度は最終年度であるため、今までの分析をまとめ、最終的な報告書を作成するようつとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、コロナ感染拡大にかんする影響のため、まず、資料収集が当初の予定どおり行えなかった。また、海外の研究者との連携についての出張もキャンセルせざるを得なかった。また、子どもの休校等により、研究活動を行う時間の確保自体が困難であった。以上により、次年度使用額が生じることとなった。次年度は、その分を、学会参加(国外については、コロナ感染拡大がある程度おさまった場合に)、東京方面への資料収集(国会図書館・近代日本文学館等での資料収集。コロナ感染拡大がある程度おさまった時期に)、あるいは、代替的な資料収集活動(相互利用による取り寄せ等)、にあてる予定である。1年の研究活動延長許可をいただいたので、有効に使うようつとめる。
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