研究課題/領域番号 |
18K02027
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
桶川 泰 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (50585362)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会学 / コミュニケーション能力 / 会話ハウトゥ本 / 共感の合理化 / 個人化 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、日外アソシエーツが出版している『日本語の本全情報1945-1992』『「日本語」の本全情報 1992-1997』『「日本語」の本全情報 1997-2002』から1945年~1999年までの「会話術」に該当する図書を収集した。 前年度の研究では『出版指標年報』に紹介されていた1978年~2017年の会話ハウトゥ本を分析資料として、「聞き上手」話法の時系列的な質的内容分析を行った。そして会話のキャッチボールを成立させるためには、相手があなたと「話をしたい」という意欲を持つ必要性があり、相手(相手の話)に共感・理解していることを伝える重要性が会話のハウトゥ本において強調されていることを明らかにした。それに対して、本年度の研究では、1950代・1960年代の会話ハウトゥ本を調査することが目的であった。 調査の結果、1950年代の会話ハウトゥ本においても「聞き上手は会話上手」という諺が紹介されており、「聞く」ことの重要性が説かれていた。また、相槌の打ち方も助言されており、「私はあなたの話に興味・関心がある」というメッセージを伝えることの重要性が力説されていた。相手に対して「共感・理解」していることを示しつつも、相手の会話のボールをキャッチすることの重要性は1950年代~2017年までの65年間以上、会話ハウトゥ本において変わらずに力説され続けていることが明らかになった。 また、会話ハウトゥ本を多く執筆している人はどのような社会的属性を有するのかについても調査した。調査の結果、会話ハウトゥ本を多く執筆している人が時代ごとに変わるよりも、時代を通して変わらずに多くの会話ハウトゥ本を執筆し続けている著者が存在していた。江木武彦、永崎一則、坂川山輝夫、鈴木健二、福田健、江川ひろしといった人たちであり、話し方研究所、話し方研究室、アナウンサーといった会話を生業とした職業にいる人達であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『日本語の本全情報1945-1992』に載せられている1950年代・1960年代の「会話術」の図書はほぼ収集し、考察も終えている。が、全てではなく、古書で価格が非常に高いもの、古書ですら購入することができないものも存在し、資料集めがやや遅れている。また「ndlデジタル化送信サービス」も用いているが、コロナウィルス感染拡大のため、研究が進まない状況にあった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、2000年代以降の会話観の特質として「反省的な意識」と「日々の会話の経験」という仮説的知見を得ているが、1990年代までの著名な会話術の本において、「反省的な意識」の必要性を促す会話観が存在していなかったのかについて調査を進めていく。また「聞き上手」における会話の合理性をジョージ・リッツァが提起した合理化論(効率性・計算可能性・予測可能性・制御)から考察していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度でも言及しているように、日外アソシエーツが出版している『日本語の本全情報1945-1992』『「日本語」の本全情報 1992-1997』『「日本語」の本全情報 1997-2002』をもとに会話ハウトゥ本を収集しているが、品切れ・絶版の本も多い。絶版などの本は「ndlデジタル化送信サービス」を用い、読み進めていき、必要な箇所のみをコピーするか、高額になるか古書で購入するかを決め、対処している。やや時間がかかり、次年度の使用額に回している。
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