従来、戦争と個人の人生過程に関するライフコース研究においては、戦争の人生に対する影響という場合、その研究対象は、軍務・軍役などで直接戦闘に参加した人びと(成人男性)が中心であり、彼らの家族、とりわけ子どもへの影響については、ほとんど科学的な問題関心の的になってこなかった。 本研究には、子ども期に(父)親を戦争で失った人びとの人生軌道に着目することで、これまで見過ごされてきた人生経験をとらえようとしたところに、これまでの研究にない新しさがある。また、戦争・戦災体験そのものではなく、それが後の人生に及ぼす影響を理解するという、戦争についての理解に新しい点を付け加えるものといえよう。
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