研究課題/領域番号 |
18K02033
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
山本 薫子 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (70335777)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バンクーバー / 低所得地域 / ホームレス / コロナ禍 / 支援活動 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
2022年9月、2023年2-3月に現地調査を行い、本課題で設定したテーマに加えて、コロナ禍の緊急生活支援活動の実態と地域活動の再編について資料収集、ヒヤリング調査を実施した。 まず、コロナ禍のロックダウン下での地域の状況について把握した。次に、コロナ禍での緊急対応として組織された、民間団体によるDTES地区に特化した支援活動について把握した。具体的には、DTES Response、CCRNに関して資料収集、ヒヤリングを行い、食糧、食事、衛生用品、携帯電話などの配布がなされたこととそれらの地域社会への影響を把握した。 次に、コロナ禍前から当該地区で低所得住民への支援を行ってきたSRO Collaborativeについてとりわけ中国系住民への支援活動の詳細を把握した。また、支援活動展開を通じて、中国系住民への支援活動を行う他の地域団体との連携についても把握した。 これら以外にもホームレス支援組織、社会企業等へのヒヤリングを行い、コロナ禍での地域支援活動の展開とそこでの課題について把握した。 以上を踏まえ、コロナ禍の緊急支援活動が、長く地域で活動をしながらも繋がっていなかった支援者・支援団体が連携、協力して活動する場となったこと、行政機関との協力、連携が進んだ機会にもなったことを把握した。同時に、各ネットワーク・団体はすでに緊急時の次の段階に進んでおり、コロナ禍前からの地域課題の再編を図るとともに地域内連携も進めながら取り組んでいることを把握した。一方で、緊急補助金が縮小・停止することで一部の支援プログラムを取りやめた例も多くある。コロナ禍の前から補助金頼みの支援活動の限界について地域団体から指摘はなされており、これについて地域活動団体が今後どのように対応していくかさらに検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、9月および2月・3月の2回にわたってカナダに渡航することができ、各2週間の滞在調査を実施することができた。2回の滞在調査により、対象地域におけるコロナ禍での状況、地域活動への影響について把握することができた。それらを通じて、本課題のテーマであるエスニック・マイノリティの状況、およびそれらに関わる地域活動、社会運動の状況についても十分な資料収集を行うことができた。以上から、本課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年9月に現地調査を計画している。コロナ禍の緊急支援活動のその後について把握すると同時に、DTES Responseの中心メンバーらによるランドトラストの取り組みにについて情報を収集する。長く行政からの補助金によって福祉施策が行われてきた低所得地域において住民が自ら主体的に選び取るような主権の回復、獲得を実現するための土地、住居の共同所有のあり方が目指されているが、それが具体的にどのような形態として現れているか、実証的に確認する。 本年度は課題の最終年度であるため、2018年度以降の研究成果のまとめも行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、現地調査実施はまだ限定的にしか実施できず、そのために差額が生じた。2023年度は現地調査を実施し、研究成果をまとめる。そのための費用として使用する予定である。
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