最終年度は2023年9月に現地調査を行い、補足的なデータ収集を実施した。この調査では(1)DTESでのジェントリフィケーションをめぐる状況の変化(特にこれまで一定の歯止めの役割を果たしてきた条例の見直しに関する議論)、(2)グラスルーツの地域団体の活動・財政状況(コロナ禍に特別に給付された助成金等が縮小される一方でニーズは減らず、団体の活動に負荷をかけている)、(3)ホームレスに対する排除・規制の強化の進行などについて確認した。 本課題は当初2018年度から開始し、2020年度まで実施の予定であったが、新型コロナウィルス感染症拡大にともなう渡航制限等の影響で2020年3月(2019年度)及び2020年度の現地調査が実施できなかったため、期間を延長し、2023年度まで研究を実施した。 2018年度は7ヶ月間の現地調査を実施し、DTESおよび周辺での日系、中国系、先住民、黒人グループの諸活動やネットワーク形成、及び従来の地域活動団体の活動展開について参与観察調査を実施し、ジェントリフィケーション反対運動、住宅不足問題への改善要求運動を軸として、横断的な協力関係が構築されていることを確認した。一方で、反対運動の持続には一定の資源が必要であり、グラスルーツの小規模団体が中心であるDTESやその周辺では必ずしも全体を包括的に取りまとめる組織が存在しないことが課題となっている。また、低所得地域が縮小することによって土地への権利をめぐってエスニックマイノリティ間の対立も生じていることを確認した。 2019年度は上記に係る状況の経過についてデータ収集を実施した。 2022年度、2023年度は、2020年からのコロナ禍での地域内での支援活動の展開に関するデータ収集、分析を行った。コロナ禍の緊急時には立場を超えた協力が見られたが、一方で助成金が縮小する中で、限られた機会を競い合う関係も生じている。
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