研究課題/領域番号 |
18K02038
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岡田 あおい 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50246005)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 宗門改帳 / 飛騨高山 / 歴史人口学 / 基礎シート / 家族社会学 / 人口 / 世帯 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近世都市飛騨高山の歴史人口学・家族社会学・歴史社会学の学際的研究を行うことである。これまで、歴史人口学は精力的に研究を進めてきたが、そのほとんどが農村の史料を用いた研究である。近世都市飛騨高山には約100年にわたる、しかも欠年のない最良の宗門改帳が残存している。すでにこの史料は1960年代に速水融を中心とする慶應義塾大学古文書室において撮影され、マイクロフィルム化されている。その数は70巻に及ぶ。この貴重な史料は故千葉大学名誉教授佐々木陽一郎氏により研究が進められてきたが、氏は2017年急逝され、氏の遺志により申請者の研究室に氏が作成した基礎シート(BDS)が移された。この貴重な資料を整理、データベース化し、近世都市の研究を完成させることが本研究の最終目的となる。本研究の一連の流れは、以下のとおりである。まず、デジタル化された宗門改帳から歴史人口学の手法にのっとり基礎シート(BDS)を作成し、次に基礎シートをパソコンに入力し、データベースを作成する。 本研究では、デジタル化された飛騨高山の宗門改帳から基礎シートを作成するという、基本的な作業を3年間で行うことを計画している。初年度である本年は、まず故佐々木陽一郎先生が作成された基礎シートがすでに劣化し始めているので、これのコピーをとり利用可能な状態にした。この作業と同時に、デジタル化された宗門改帳の目録を作成し、目録に従って宗門改帳の紙焼きおよび簡易製本(504冊)を行った。 宗門改帳の残存期間は、壱之町54年間、弐之町99年間、三之町7年間である。史料の中で最も残存期間の長い弐之町の宗門改帳から基礎シートを作成することにし、作業を開始している。作業は、故佐々木先生作成の基礎シートと照らし合わせながら、現在歴史人口学で共通のフォーマットの基礎シート(BDS)を新たに作成する形で進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
デジタルデータを紙焼き,仮製本するのに当初予定していたよりも時間がかかったため,基礎シート作成開始が遅れた。また、高山の宗門改帳の記載方法がかなり複雑なため、基礎シートの作成に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
史料の紙焼きが終わり、仮製本が完成したので、ピッチを上げて基礎シートの作成を行いたい。史料である高山の宗門改帳は、申請者がこれまで扱ってきた史料と異なり、記載方法が複雑で、基礎シート作成にはかなり高度な古文書解読能力と慎重さが要求される。当初予定していたよりもかなり多くの時間を費やさなくてはならないことを覚悟して取り組みたい。また、古文書解読に関して、専門的知識の提供(古文書解読指導)に予算を回し、正確さを担保し、作業効率を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
デジタルデータの紙焼きおよび仮製本にいくつかの工夫をすることにより、当初計上していた予算よりも低額な金額に抑えることができた。そのため、紙焼きおよび仮製本に充てていた予算を次年度に繰り越すことが可能になった。次年度は、基礎シート作成のための費用にこの予算を計上する。具体的には、史料である高山の宗門改帳の記載方法が複雑であるため、高度な古文書解読知識を必要とする。専門的知識の提供(古文書解読指導)に繰り越し分を充て、正確さを担保しつつ、効率よく作業を進めていきたい。
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