本研究の最終的な目的は、近世都市飛騨高山の歴史人口学・家族社会学・歴史社会学の学際的研究を行うことである。本研究は10年計画で行われている。これまで、歴史人口学では、家族史研究との学際的研究を行うなど精力的に研究を進めてきたが、そのほとんどが農村の史料(宗門改帳)を用いた研究である。近世都市の歴史人口学的研究は、史料の制約に阻まれてきた。しかし、近世都市飛騨高山には約100年にわたる、しかも欠年のない史料が残存している。飛騨高山の研究が完成すれば、近世都市の歴史人口学的研究をかなり進展させることができる。 この史料は1960年代に速水融を中心とする慶應義塾大学古文書室において撮影され、マイクロフィルム化されている。その数は70巻に及ぶ(現在、麗澤大学人口・家族史研究プロジェクト室に所蔵)。この貴重な史料は、故千葉大学名誉教授佐々木陽一郎氏により研究が進められてきたが、2017年氏の急逝にともない申請者の研究室に氏が作成された基礎シート(BDS)が移された。当初、この基礎シートを整理しデータベース化することを計画していたが、 基礎シートを整理した結果、不備があることが判明し、基礎シートを作り直す作業から研究を開始することにした。本年度は、昨年度に引き続き基礎シートを作成した(現在も作業を継続中)。作業は、史料の中でも残存期間が最も長い弐之町の宗門改帳(99年分)の基礎シートから作成をはじめ、同時に時間を短縮するために、できる範囲でパソコン入力もおこなっている。また、飛騨高山の宗門改帳には、一筆ごとに旦那寺、個人名、年齢、続柄が記載されているばかりでなく、持家か借家かなど多くの情報の記載が残されていることから、これらの情報の整理を同時におこないながら基礎シートを作成している。
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