この20年間、ドイツの国籍政策の「リベラル」化は進んだ。外国人の国籍取得は以前よりも容易になったが、その一方でドイツ語能力やドイツ社会への知識、憲法への忠誠など、帰化の基準が明確化されるようになった。2015年以降の国籍をめぐる最大の論争点は複数国籍である。複数国籍の原則容認に反対する保守派はドイツ国家への単一の帰属意志を求めるのに対し、それに賛成するリベラル派は多様性や選択の自由を尊重する。現在のドイツにおいて、急進右翼勢力を除けば、血統原理への回帰を主張している勢力は存在せず、複数国籍反対派も容認派もともに「シヴィック」な国民概念を前提にした移民の「国民化」を支持している。
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