研究課題/領域番号 |
18K02047
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
武田 尚子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (30339527)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 貧困 / 重層化 / 再都市化 / 貧困調査 / 社会政策 |
研究実績の概要 |
本研究では、20世紀前半の「都市化」の時期と、21世紀の「再都市化(再開発)」の時期の2度にわたって、貧困層が集積しがちな地域が形成される現象に着目し、近現代社会において貧困の重層化が生じる要因を考察した。国内では東京都心部、国外ではイギリスのヨーク市の2カ所を調査対象地とした。いずれも歴史的アーカイブを用いた質的調査方法によって、貧困の重層化が生じるプロセスを明らかにした。 どちらの地域においても近代の都市化の時期に、遷移地帯で貧困層が集積した。そのような地域で貧困対策が実施されたことによって、極貧状況は解消されたが、低所得層の集積は存続した。居住環境の地理的特徴などにより、狭小区画などが存続し、居住人口は流動しているが、低所得層を吸引する要因が持続した。 東京都心部で具体的に分析したのは、渋谷区本町4丁目・5丁目である。「再都市化遷移地帯」に貧困層が居住し、アンダークラスの流入が確認できた。かつての「戦前都市化」第二段階で形成された「条件不良地域」が「再都市化遷移地帯」の「非遷移エリア」として負の条件を重層化させていた。 「戦前都市化」第一段階で、各基盤拠点は大規模区画を確保して、産業基盤が集積するコアが出現した。やや離れた地域は農村的基盤のままで、基盤改良の公的資金は投入されない。第二段階で周辺に集積効果が波及した。ただし、正負両面の効果があり、農村基盤のままのスプロール開発は多重「条件不良」地域を形成した。大規模区画の条件良好地域は、「再都市化」の対象となり、公的資金が投入されて、高機能空間に生まれ変わったが、その周辺の条件不良地域は再開発にコストがかかりすぎるため、条件不良のまま改良の資源投入から疎外され、放置された条件不良地域に負の条件が重層化されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究実績の内容に基づいて、学会報告を4回、単著の著書を1冊、発表・刊行した。
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今後の研究の推進方策 |
貧困地域の変容過程、重層化の実態を詳細に調査し、国際比較のデータを整える予定である。
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