本研究は、日本の近代化過程を、動員(労務動員及び軍事動員)という観点から捉えなおし、「統治性(M.フーコー)」の一貫した論理のもとに把握するという全体構想の中に位置づけられる。本研究では、第二次世界大戦(アジア太平洋戦争)期の、植民地朝鮮からの労務動員に焦点を当て、日本において犠牲になった朝鮮人の遺骨をめぐる諸問題や労務動員の計画と実態について、歴史社会学的方法及び聞き取り調査等によってその人的・物的資源動員を総合的に把握する。また、そのような動員計画と実態把握を通して、総力戦体制下の植民地動員計画の資源動員論的分析を行うことを目指す。2022年度までの研究経過は次の通りである。 ①植民地動員の実態解明については、社会学的研究はほとんど存在しないため、歴史学などの諸研究成果や民間での資料発掘などを参照し、社会学的問題関心からそれらの資料解読を行った。また、韓国における研究成果も可能な限り参照するようにした。これらの同時代的先行研究と並行して、実態解明のための聞き取り調査および現地調査を行ってきた。 ②動員計画については1)「(植民地動員を含む)国家総動員計画どうように策定されたか、2)「総力戦体制」下での動員組織(機構)の形成とその整備、3)動員法の体系化とその施行を通して動員はどのようになされたか、といった点を明らかにするために、行政資料等を探索したり、各地に残されている資料を収集した。 ③これらの研究作業を踏まえた上で、「総力戦と戦時期における植民地からの労務動員をめぐって」を執筆した。 ④2022年度は新型コロナ感染拡大により、主要なフィールドワークは中止せざるを得なくなった。 ⑤本研究については完全に所期の目的を達成したとは言えないが、ひとまず終えて、総力戦体制下の植民地からの強制動員が戦後の流動的下層労働者の再編成にどのような影響を与えたかという新たなテーマにつなげたい。
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