強制労働に従事して犠牲になった朝鮮人の遺骨は、日本の山野や寺院に多く残っていると考えられてきた。しかし、実際に調査してみると、寺院等で強制労働犠牲者の遺骨と確認できたものはそれほど多くはなかった。また、企業資料等に基づく研究(守屋敬彦)から、死亡者の遺骨の多くは原則として企業関係者の手によって遺族のもとに返還されたと見られることも明らかになってきた。しかし、戦時強制動員は、現在でも犠牲者の遺族に大きな爪あとを残していることも事実である。これら遺族の戦後の生活史や生存者への聞き取りを通して、実態を把握するとともに、生存当事者や遺族が抱いている強制動員の記憶を発掘することに学術的意義がある。
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