研究課題/領域番号 |
18K02051
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
ライカイ ジョンボル 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (20552699)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 家族の多様化 / 個人化 |
研究実績の概要 |
本研究において、ユーラシア地域、具体的には東アジア(日本、韓国、中国、台湾)と東ヨーロッパ地域(ロシア、ウクライナ、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア)、そしてトルコを事例に、家族変動と個人化に関する社会学的な言説(議論・理論)を比較している。本研究の土台となる初年度(2018年度)での作業を続けて、次年度(2019年度)においても主に、対象とする各国・各社会における研究教育機関(協力者)と連携しながら、現地の家族研究のあり方(その属性)や、(家族変動と個人化に関する)主な議論や理論、家族研究の理論的・イデオロギー的な方向性について情報収集を行った。現在まで、ロシア、ウクライナ、ポーランド、チェコ、スロバキア、ルーマニア、トルコの現地の協力者から本研究に必然的な情報を入手することができた。一方、アジア地域の特徴をより明らかにするために、韓国(2019年3月)、中国(2019年5月)と台湾(2019年6月)で現場調査を行った。そこで以下の2点に気づいた。 まず、中国の学術世界では家族変動と個人化に関する言説においては、以前想定されていた「個人主義は西洋の文化であり、家族主義は中国の文化であり、個人化が中国文化に合わない」というような単純な理解が必ずしも支配的な観点になっていない。むしろ、右翼や左翼のような思想の併存により、家族と個人化との関係性についての理解が多様化しているのが現状である。 また、中国での家族変動に関する研究においてはU.ベックによるリスク社会論が大変よく参照されているものの、台湾の学術世界ではベックの理論がそれほど家族変動につなげられていないことがわかった。同じ文化圏に属している中国大陸と台湾の家族研究者の理論的方向性の違いは、両社会の学者集団の開放性・閉鎖性の問題にもつながっているので、知的生態学的な観点からさらに検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各地の家族社会学についての情報収集がまだ完全には終わっておらず、そして元々2019年度において計画していたトルコでのフィールドワーク(資料収集)は2020年に行われることになった。一方、それは本研究の進捗に対して遅らせる影響を及ぼしていない。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度において、各学者集団における社会学的な理解のあり方に関して前年度までに個別に検討してきたことを続ける一方で、2020年度においては、学者集団間の相互関係・相互作用をも検討の対象とする。そうしながら、まず、アジア地域の学者集団の家族研究を東欧地域に対照させ、両者の異同について明らかにし、次に、両地域に関して得られた結果を西洋中心の社会学的な言説と比較したうえで、その異同を調べる。そうしながら、ヨーロッパとアジアの出会う所にあるトルコでフィールドワーク(資料収集)も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
① 本研究において、東アジアと東ヨーロッパ諸国、そしてトルコを事例に、各地の家族研究者に(現地の家族研究のあり方についての情報収集に関して)協力してもらっている。2018と2019年度においてはすでにいくつかの国の現地の協力者から貴重な情報が入手することができたが、現地の協力者の都合によりまだ遅れているケースもある。 ② 2019年度において計画していたトルコへの出張(資料収集)は、先方の協力者の都合の関係で、2020年度に実施することを計画している。 ③ 本研究において、様々な(情報収集や分析のために使いたい)資料(テキストなど)が必要である。その一部がすでに到着しているが、東アジアと東ヨーロッパの書店から注文する場合は、西欧北米の書店より時間がかかるときがある。2020年度において、必要な資料を注文し続ける。
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