研究課題
本研究において、ユーラシア地域、具体的には東アジア(日本、韓国、中国、台湾)と東ヨーロッパ地域(ロシア、ウクライナ、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア)、そしてトルコを事例に、家族変動と個人化に関する社会学的な言説(議論・理論)を比較している。本研究の土台となる初年度(2018年度)と次年度以降(2019~2021年度)において行った作業を基に、五年度(2022年度)においては、新型コロナウイルスの関係で昨年度(2021年度)実施できなかった研究を実施することにした。具体的にはアジア地域の学者集団の家族研究を東欧地域に対照させ、両者の異同をも検討の対象とした。とはいえ、今年度においても(2021年度と同様に)新型コロナウイルスにより、以上の計画を実現することにはまだやや制限があった。そのため、基本的に、昨年まで集めてきた資料を検討することになった。一方、2022年7月3日に国際オンラインシンポジウムを開催し、本研究に対して大変貴重な意見交換・情報収集を実現することができた。本シンポジウムにおいて、東欧地域とアジア地域から12名の研究者を報告者として招聘し(本科学研究費の代表者を含んで報告者は合計13名であり)、合計10か国(日本、中国、韓国、ベトナム、ロシア、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、トルコ)における家族(社会学)研究の現状について活発な議論を行った。そこで、具体的には各地の家族研究の制度化(研究者の人数や専門雑誌の有無)、使用されている教科書、そして支配的な研究課題とイデオロギーのあり方などが報告や議論の対象とされていた。このような(比類のない)国際オンラインシンポジウムで得られた情報を基に、東欧地域とアジア地域の家族研究の現状を対照させることもできた。なお、今年度は本国際シンポジウムで得られた成果をも背景に、論文3本を執筆(うち2本は2022年度に出版)した。
3: やや遅れている
2022年度において新型コロナウイルスの関係でまだ海外調査にはやや困難があり、本研究で対象とする各地の調査協力者の中にも協力が難しい場合もあった。その関係で、主に昨年度まで集めてきた資料を検討することになった。一方、2022年7月3日に開催した国際オンラインシンポジウムで行われた学術的な報告や議論は非西洋文化圏の家族研究の現状を明らかにすることには有意義な形で貢献した。
2023年度において、まず新型コロナウイルスの関係で今年度実施できなかった研究を実施する。具体的にはアジア地域の学者集団の家族研究を東欧地域に対照させながら、両者の異同についてさらに明らかにする。そうしたうえで、とりわけ東アジア地域における家族研究の多様性と共通性を明確にする。次に、両地域に関して得られた結果を西洋中心の社会学的な言説と比較したうえで、その異同を調べる。そうしながら、家族と個人化に関する西洋中心の社会学の主流理論を問い直す。そこで、対象としている各社会・各地域における支配的なイデオロギー的資源のあり方に焦点を当て、各地の社会的環境と家族研究の関係性についてさらなる検討を行う。そのために、必要な書類や資料を収集し続けながら、(先方の教育研究機関の状況により)現地のフィールドワーク(トルコまたはハンガリー)で資料収集も行う。また、本研究で対象とする各国・各社会における家族研究のあり方とともに、家族変動と個人化に関する共通した社会学的な言語(概念的統合等)の形成(作成)可能性を検討する。そうしながら、家族・国家・経済・市民社会の4領域の相互関係・相互作用の現状及びこれらの再編成過程についての理解を深め、「多元的近代」研究へも貢献する。
① 本研究において、東アジアと東ヨーロッパ諸国、そしてトルコを事例に、各地の家族研究者に(現地の家族研究のあり方についての情報収集に関して)協力してもらっている。2018~2022年度においては数多くの国の現地の協力者から貴重な情報を入手することができたが、現地の協力者の都合によりまだ遅れているケース(台湾)もある。② 本研究において、様々な(情報収集や分析のために使いたい)資料(テキストなど)が必要である。そのうち多数がすでに到着しているが、2023年度において、必要な資料を注文し続ける。③ 2022年度において計画していた海外出張(資料収集)は、新型コロナウイルスの関係で実施できなかったため、2023年度に実施することを計画している。
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Sosyoloji Dergisi
巻: 43 ページ: 193-219