研究課題/領域番号 |
18K02054
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研究機関 | 大阪商業大学 |
研究代表者 |
佐々木 尚之 大阪商業大学, 公共学部, 准教授 (30534953)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 少子化 / 未婚化 / 家族形成 / 子育て支援 / ワーク・ライフ・バランス / 女性の就業 / 社会政策 / 政策評価 |
研究実績の概要 |
2019年度は本研究課題の核心をなす学術的「問い」の一つである、未婚者が結婚しない理由および既婚者が子どもを生まない理由の検証を重点的に行った。筆者のこれまでの研究からも、雇用形態がその後の結婚生起に大きく影響することが明らかにされている。とくに、男性において正規雇用以外であった場合、結婚ハザードが著しく低下することは、その他多くの研究で再現されてきた。東京大学社会科学研究所が実施するJapanese Life Course Panel Survey(JLPS)のWave1からWave9を2次利用しイベントヒストリー分析を行ったところ、男女ともに正規雇用以外であると結婚が生起しにくいことが支持された。しかしながら、この結果には性差があることが明らかになった。男性の場合、正規雇用であっても年収が300万円を下回ると結婚ハザードが50%程度に減少しており、稼得力が強く影響していた。女性の場合、稼得力による差は認められず、正規雇用以外であると結婚を考慮する潜在的パートナーとの出会いが限られることが影響していた。既婚者が子どもを生まない要因については、大阪商業大学JGSS研究センターが実施したライフコース調査を用いて、保育所利用および三世代同居の影響を検討した。その結果、キャリア志向の強さや待機児童問題が起きにくい地域に居住していたなどのセレクションバイアスを除いたうえでも、第1子が保育所に通った女性は、その他の女性にくらべて正規雇用を継続する割合が高く、世帯年収も高かったものの、子どもの数には有意な差がなかった。三世代同居についても因果推定の結果、子どもの数に有意な影響がないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画が外的要因により予定通り進められないことを考慮し、いくつかの代替処置を講じることにより当初の目的を達成できるよう努めている。具体的には、東京大学社会科学研究所が実施したJapanese Life Course Panel Survey(JLPS)を2次利用することにより、調査時点での本人収入や価値観などの家族形成に強く影響する要因を考慮した分析が可能となった。また、家族社会学会が2018年度に実施した第4回全国家族調査、東京大学社会科学研究所が2019年度に実施した三世代親子調査において、保育所利用の有無や三世代同居の有無などの項目を尋ねており、複数データを用いて分析結果の再現性が確認できるよう準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は積極的に研究発信する予定であったが、昨今の状況に鑑みると学会報告は困難な状況にある。本来であれば7月に開催されるInternational Sociological Association World Congress of Sociologyにおける口頭発表が採択されていたものの、2021年2月に延期されている。また、9月には台湾のAcademia Sinicaにおいて研究交流会を実施する予定であるが、実現の可能性は低いと考えられる。こうしたことからも、投稿論文を中心に成果報告を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画において購入予定であったGIS分析の統計ソフトウェアを購入しなくても利用できる見込みができたことで残額が生じた。また、ブラジルで開催される予定の国際学会での口頭発表が採択されたものの、最終年度の予算では旅費が大幅に不足するため、繰り越す必要があった。
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