研究課題/領域番号 |
18K02057
|
研究機関 | 大月短期大学 |
研究代表者 |
宮崎 理枝 大月短期大学, 経済科, 教授(移行) (20435283)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | バウチャー / ケア政策 / ケア労働 / 雇用関係 / 外国人労働者 |
研究実績の概要 |
2021年度は、Covid19 のパンデミックにより当初の研究計画とは大きく異なる形で研究を遂行した。とくに当初の3つの研究目的、すなわち(1)日本とイタリアにおける外国人介護労働者への福祉(介護)と入国管理の両政策の整理と相互作用の分析、(2)イタリアの地方において展開される当該労働者の専門職業化とバウチャーによる就労の適正化に向けた支援策の実態と政策効果の解明、(3)2016年以降の日本における、外国人家事労働特区と介護領域の技能実習生の解禁にみる、日本の政策動向の把握、のうち、(2)と(3)に含まれた日伊でのヒアリング調査は未実施状態がが続いた。しかしその一方で、新たな文献調査や日伊比較研究テーマの精査に従事することができた。特にこのパンデミックが生じたことで、当初の研究目的と研究の意義に加えて、新たな研究課題とその社会的な意義が以下の2点において確認できた。 第一には、上記の研究目的(3)の日本の事例については、パンデミックによる入国制限によって、技能実習生の(再)入国数が激減した。これにより制度施行から数年間でパンデミック以前に急増していた介護領域の技能実習生数も激減させることになり、このことは高齢化により継続的な労働力を必要とする日本の介護領域において、短期循環型の低技能(技能を必要としない)移民労働者による介護供給の課題が明らかにされた。 第二には、(2) のイタリアについては、主要諸国の中でも(中国を除き)最初にCovid19のパンデミックが生じたこともあり、ひとたび廃止されたのち実施的に制度的な縮小を伴い復活した家事・ケア労働者に対するバウチャー制度が、ロックダウンが実施されていた2020年春季において、Covid19 によるリモートワークや保育所の閉鎖への対応策の一環として用いられ、利用が劇的に増加した際の動向を把握することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Covid-19 のパンデミックと入国制限、行動制限の影響が大きく、当初の研究計画で予定されていた、日本での大阪における外国人労働者特区における3つの参入企業と、イタリア北部3州における聞き取り調査が未実施となっている。これに対して、現地調査が実施できないため、文献調査をより詳細に実施したほか、Covid-19 のパンデミックの影響で、休業者やリモートワーカーに対応したバウチャー制度は新設されたことから、バウチャー制度に関しては新たな知見を得ることができた。また日本の事例についても、日伊比較研究を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の通り、Covid19の影響で、研究機関の制限もあり、本研究目的のひとつであった対面での聞き取り調査の実施を見送った。その一方で、Covid19のパンデミックが生じたことで、特にその影響を大きく受けた後期高齢者の占める比率の最も多い国である日伊両国では、現行の外国人介護労働者の役割や受け入れ(入国・在留管理)制度が大きく異なるものの、両国ではそれらの課題が改めて大きく露呈したといえる。財政悪化、福祉に対する家族責任の強さ、そして最も高い高齢者人口比率という点で日伊両国の共通性は極めて高いなか、そうした課題とへの対応がいかに行われているのかにも焦点をあて、イタリアについては、パンデミック下で新たに生じた、市場+現金給付中心の高齢者介護政策の改革の必要性に対する主要なアクターのアクションについて、また日本については、今後新たな研究課題における技能実習生を中心とする短期還流型の外国人介護労働者の就労環境、雇用関係、そしてとくに滞在期間中の彼らの技能やキャリアの動向について、プレ調査の準備を行う計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
引き続きCovid19 の影響で、現地調査等が研究計画通り遂行できなかったため、次年度使用額が生じた。本年度の研究計画については上述の通り遂行する。
|