本研究の目的は:(1)日本とイタリアにおける当該労働者への両政策の整理と相互作用の分析、(2)イタリアの当該労働者の専門職業化とバウチャーによる就労の適正化に向けた支援策の実態と政策効果の解明、(3)2016年以降の日本における、外国人家事労働特区と介護領域の技能実習生の解禁にみる、日本の介護政策と移民(入国管理)政策双方の動向、ならびに現状の受入れ実態に関する比較分析であった。 このうち、日伊双方におけるヒアリング調査の実施は、Covid-19のパンデミックに重なったため、大きな制限や計画変更があり、とくに上記(2)のイタリアでの現地調査は実施できなかった。しかし、本年度は研究期間の最終年度であり、研究成果の公開に重点を置いた他、国内での調査も実施した。これによって新たな研究の構想と課題も明らかにできた。 具体的にはイタリアで実質的に最も主要な介護労働供給者となっている外国人家事労働者について、その労働環境に関わる権利獲得運動のクライマックスともいわれたILOの家事労働者条約(C189号)をイタリアが批准してもなお、当該労働者としての公的保障の対象外となる無申告労働者が過半数を占め続ける背景が、条約批准プロセスにあるという趣旨の論文を、Global Labour Journal誌で、また、日本とイタリアの介護政策による、国家と家族間での介護供給の形態や家族介護者の属性の違いに関する論文を、International Journal of Environmental Research and Public Health誌で発表した(いずれも査読付き)。 また国内での調査は、九州地方で、介護領域の技能実習生の監理団体について、管理団体となり経緯や性質と、管理団体による外国人介護労働者の確保と労働環境の保全に関してヒアリングを行った。
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