研究課題/領域番号 |
18K02059
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
井出 智博 静岡大学, 教育学部, 准教授 (20524383)
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研究分担者 |
白井 千晶 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (50339652)
有村 大士 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 准教授 (90712068)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会的養護 / 自立支援 / レジリエンス / 将来展望 / 児童養護施設 / 里親家庭 |
研究実績の概要 |
従来,児童養護施設における自立支援は退所間近になって生活するために必要なスキル等を教えることを中心として行われてきたが,子どもの側の十分な心理的な準備(レディネス)が形成されないままに行われるおとなから子どもへ(上から下へ)の支援は,効果的でないばかりか,支援者が子どもにとって口うるさい存在となり,両者の関係を悪化させる可能性が指摘されてきた。そこで,本研究では,子どもが自らの将来について考え,自立に向けたレディネスが形成されるような自立支援の開発に取り組んできた。2019年度は前年に刊行された『子どもの未来を育む自立支援』(岩崎学術出版社)をもとに,児童養護施設,及び里親家庭で暮らす子どもを対象として,児童養護施設,児童家庭支援センター,里親支援機関,里親会等と協働し,社会的養護児童に対する心理的自立支援の開発と効果の検証に取り組んだ。各施設や機関による状況は異なるために,各施設,機関の関係者と実施形態や内容についての検討を重ね,現状と課題の整理を行った。 また,こうした実践研究と並行して,基礎的な研究にも取り組んだ。第一には児童養護施設で暮らした経験を持つ退所者を対象とした質的調査をもとにして,彼らの適応的な自立を支える要因を検討した。第二に従来の社会的養護児童に対する自立支援に当事者の視点が欠けていることを鑑み,社会的養護を経験した若者(ユース)は自らの経験からどのような自立支援が必要だと回顧するのかということを明らかにするための質的調査に取り組んだ。前者については学術論文としてその成果をまとめるに至った。後者については,調査の途上にあり,次年度も継続した調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
社会的養護を経験したユースに対する質的調査は,感染症拡大の影響,及び研究代表者の所属機関の変更に伴う作業の影響を受けて,一時的に中断せざるを得ない状況にあったため。
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今後の研究の推進方策 |
社会的養護を経験したユースに対する質的調査はその方法をインターネットを介したインタビュー調査に変更することで,遂行する予定であるために,当初計画通り,調査を遂行できるものと考えている。 また,児童養護施設,児童家庭支援センター,里親支援機関,里親会等と協働し行ってきた社会的養護児童に対する心理的自立支援の開発では,施設や里親,支援機関等へのヒアリング調査も合わせて実施してきており,最終年度には全国的な調査の実施を加えて,心理的自立に取り組むための課題や実現に向けての提言を行うことができる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症拡大,及び研究代表者の所属機関変更(異動)に伴う引っ越し作業のために予定していたインタビュー調査,及び全国調査の実施が次年度に繰り越されたため。 2020年度については,2019年度に予定していたインタビュー調査を感染症拡大の状況を見ながら再開,もしくはインターネットを介した調査に変更して実施する予定であるため,2019年度に申請し,使用しなかった予算を執行する予定である。
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