研究課題/領域番号 |
18K02060
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
末松 三奈 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (10728744)
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研究分担者 |
高橋 徳幸 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (00758732)
岡崎 研太郎 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (90450882)
半谷 眞七子 名城大学, 薬学部, 准教授 (40298568)
渕田 英津子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (90315846)
阿部 恵子 愛知医科大学, 看護学部, 教授 (00444274)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | dementia care / family carer / care burden / interprofessional work / peer support / stigma |
研究実績の概要 |
2019年度は、「2国間における認知症とSCとの関連性」を医療従事者に対するインタビューと認知症患者及び家族へのインタビューを分析する質的研究を行った。認知症に関する質的研究から開始したが、「認知症医療・介護における多職種連携に対する認識 ~日本とスコットランドの看護師の語りによる質的分析~」が、2020年2月号の地域ケアリングに掲載された。 また、両国における認知症介護を行っている家族介護者(主介護者)へインタビューした結果、両国で共通する家族介護者の認識として、1.家族による認知症受容の困難性、2.困難な認知症介護による介護負担感、3.介護責任からの逃亡願望、4.家族介護者の役割間葛藤の4つが存在することが明らかとなった。相違点としては、副介護者(主介護者以外の家族介護者)、地域、介護サービス提供者による支援に関する、主介護者の認識が明らかとなった。 スコットランドでは、主介護者と副介護者の家族間介護認識が一致しており、役割分担が明瞭であること、さらに主介護者は副介護者が協力的であると認識しているために、主介護者にかかる介護負担感は副介護者と同程度に感じていた。また、地域に対して認知症であることを公表する事に抵抗感を持たない Let it be 的態度により、地域支援を受けやすく、介護サービス提供者による支援に満足していることから、介護負担感自体を減少させていると考えられた。 一方、日本では主介護者と副介護者の家族間介護認識が不一致であり、副介護者との役割分担が曖昧で、非有効的協力を感じており、さらに地域に対して認知症であることを公表する事に抵抗感があること、受動的な公表態度から、孤立した関係性となり、大きな介護負担を抱えていた。また、介護サービス提供者に対して、主介護者向け支援が不足していると感じており、同質性の高い集団への支援を求め情報開示をすることが多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「スコットランドと日本における糖尿病とソーシャルキャピタル(SC)との関連性」行う予定であったが、スコットランドの対象者である糖尿病患者にアクセスするために、時間を要し倫理委員会の承認も得られていないため、「2国間における認知症とSCとの関連性」質的研究を先に行った。研究計画した際には、認知症当事者及びケアを行う家族にインタビューを行う予定であったが、スコットランドの共同研究者からの提案により、ケアを担当する者として幅広くインタビューを行うこととなったため、インタビュイーの人数が多くなり、分析に時間を要することとなった。認知症ケアに携わるものの視点には、家族以外で施設などでボランティア活動を行う者、認知症ケアを担当する医療者も含まれるため、医療従事者側にインタビューしたものと家族介護者にインタビューしたものを分けて分析することとした。現在までに、両国の医療従事者側の看護師の視点を分析した結果は論文化され、両国の認知症家族介護者の認識を分析した結果については、学会発表を予定している。今後、質的研究の結果をまとめ、さらに量的研究を開始するためには時間を要する。
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今後の研究の推進方策 |
研究を推進していく対策としては、定期的なメールのやり取り及びスカイプまたはズームミーティングにより、スコットランドの共同研究者と進捗状況を確認し、それぞれ進めていく。まず、質的分析の結果を学会発表及び論文化する。また、新たに量的研究を開始する際には、スコットランドの共同研究者に協力研究者を紹介してもらう。スコットランドにおける糖尿病患者に対する質問票を用いた調査を行うために、スコットランドにおける倫理委員会の承認を得たのち、共同研究者及び協力研究者に依頼して糖尿病患者を対象に調査を行う。得られた結果は、先行研究で行った日本における結果と比較し考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の一部を報告するための出張費用を計上していたが、前年度内では国内国外学会への発表を行わなかったため、研究分担者の分担金として旅費が使用されずに、今年度使用することとなった。2020年6月(8月に延期となった)日本老年医学会学術集会に演題が採択されており、研究代表者が発表するための国内出張のための旅費が必要である。また、論文を作成し英文校正を必要とするため、費用が必要である。さらに、量的研究を開始する際には、生命倫理審査にかかる費用が必要であり、その後の論文作成にかかる英文校正費用なども計上している。
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