研究課題
Positive Aspects of caregiving(PAC)scale日本語版を作成し、信頼性と妥当性の検討を行った。従来、認知症等の介護者の心理状態に関する研究では、介護負担感といった介護の負の側面が着目されてきたが、近年は介護によって得られる肯定的側面にも着目すべきであると考えられている。我々は、PAC scaleの原著者より許可を得て、日本語版を作成した。日本語版作成にあたり、本研究班の研究者およびバイリンガルの日本人が独立して翻訳を行い、それを統合して一つの版を作成した。その後、翻訳の経験に長けた翻訳者によるバックトランスレーションを行い、乖離がないか確認した。その後少人数の対象者での予備調査を経て、日本語版を完成させた。作成した日本語版の信頼性と妥当性を検討するため、熊本大学病院神経精神科認知症専門外来を受診した患者家族に対して調査を実施した。78名の患者家族に対し、PAC日本語版および介護負担感尺度であるZarit Burden Interview(ZBI)や、現在の介護状況、服薬状況、希死念慮等についてたずねた。患者の臨床的情報として、認知機能や認知症の行動・心理症状(BPSD)などを評価した。PAC原版では、9項目の各項目について「まったくあてはまらない(1点)」から「とてもあてはまる(5点)」の5段階で評価し、「わからない」は-3点、「回答拒否」は-4点として合計得点を算出するが、本研究では、原版どおりの合計得点と、わからないおよび回答拒否を欠損として有効回答項目から換算した合計得点をそれぞれ算出した。その結果、それぞれの合計得点ともに十分なクロンバックのα係数を示し、因子分析では原版とほぼ同様の因子が抽出できた。PACは介護負担感や患者の認知症重症度、BPSDとは関連が弱く、独立した要因である可能性が示唆された。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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