研究課題/領域番号 |
18K02065
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
安部 幸志 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (90416181)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高齢者 / 社会的孤立 / 精神的健康 / 高齢者施設 |
研究実績の概要 |
本研究は、高齢者施設が提供するサービスを利用している高齢者の友人関係・社会的孤立に着目し、高齢者特有の友人関係を測定する尺度を開発するだけでなく、社会的孤立の軽減につながる要因について検討することを目的としている。 本年度は新型コロナウイルス感染症の流行によって、高齢者施設における対面での調査は遂行不可能となったため、前年度対面調査を行った高齢者25名に対して、郵送による質問紙調査を行った。質問紙においては、杉下ら(2016)のMMSE(Mini-Mental State examination)、Furukawa et al.(2008)の抑うつ尺度(K-6)、島井ら(2004)の日本語版主観的幸福感(Subjective Happiness Scale)、新たに開発したご近所を含む家族以外の対人関係を測定する項目および若年者との交流関係を測定する項目が含まれる調査を実施した。 前年度の対面調査で得られたデータとこの質問紙調査で得られたデータを用いて、縦断的データとして解析を行った。その結果、若年者との交流は、高齢者の精神的健康を維持し、主観的幸福感を高める有意な効果を有していることが明らかとなった。一方で、本研究の主目的であったご近所を含む高齢者間の対人関係は、良好な影響は認められず、逆に対人関係が活発であるほど精神的健康が低いという傾向が認められた。この原因としては、高齢者における対人関係の測定手法の妥当性が十分でなかったことが考えられる。そこで、次年度も研究調査を継続し、本年度の調査によって明らかになった課題を解決するために、出来れば対面調査によって、さらに詳細なデータを入手することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の夏以降に対面での調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、高齢者施設での調査は実施不可能となった。データを補完する目的で質問紙調査を実施したが、対面調査において得られたデータとは質が異なるため、可能であればやはり再度対面での調査を実施すべきと考えられる。また、施設サービスの利用や対人関係が与える影響よりも、新型コロナウイルスによる対人交流の制限の方が、精神的健康や主観的幸福感に与えている影響が大きいと思われるため、研究デザインについて再検討した上で調査を実施する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究デザインを再検討し、秋以降に対面での調査を実施する予定である。幸いにも高齢者施設側は研究に協力的であり、新型コロナウイルス感染症の危険率が十分に低くなった場合は、対面での調査を再開しても良いとの返事を頂いている。 しかしながら、現時点では確実に対面での調査が再開可能となるとは言い切れないため、ウェブ調査等を含め、より確実にデータを得るための方法についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は科研費に基づく研究成果を発表するために複数回海外での学会発表を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行のため、すべての学会がオンライン学会となり、旅費の支出がなかったことが大きな理由である。また、調査協力者への謝金等も、調査が当面の間延期となったために、本年度は支出がなかった。 次年度においては、研究成果を広く公開するために、海外での学会発表を予定しつつも、ウェブ調査などを行うことで、より確実にデータを入手する方法についても検討したいと考えている。
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