研究課題/領域番号 |
18K02067
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
中川 薫 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (00305426)
|
研究分担者 |
山本 美智代 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 教授 (00269515)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 東日本大震災 / 障害児・者 / 福祉避難所 / 被災状況 |
研究実績の概要 |
【目的】東日本大震災において、障害児者の避難状況、福祉避難所の実態を明らかにすることが研究全体の目的であり、今回は、宮城県、岩手県、福島県の震災記録の分析から3県の共通点を抽出する。 【方法】インターネットを通じて資料を収集し、各県における障害児・者の避難状況、福祉避難所の状況の共通点を抽出した。 【結果】1点目は、避難行動を起こすことの困難があげられる。障害児・者が避難行動をとるには周囲の助けが必要になるが、その助けを得ることが難しかった。また「避難所には行けない」「避難はできない」と、初めから諦めて自宅から離れないケースが多く存在するという共通点もあげられた。2点目は、福祉避難所は近づけない場所であったということである。まず、障害児者と家族は福祉避難所のことを知らなかった。福祉避難所は事前指定が進んでいないこと、また事前指定があってもその情報が周知されず、彼らは福祉避難所の存在、開設場所、施設について知らなかった。一次避難所に行くと、バリアフリーでない環境上の困難、あるいは周囲との関係性の困難から居続けることができず、避難所から出ていかざるをえなかった。そのあと、避難場所を転々とすることも共通点であった。一次避難所を経由する福祉避難所の利用システムは、一次避難所の利用がそもそも困難なことからも現実的に難しかった。多くの障害児・者が自宅に戻ったが、在宅避難者の実態が自治体により把握されず、支援を受けにくい状況が発生していた。3点目は、安否確認の困難である。個人情報保護の壁があることや、もともと福祉サービスの利用が少なく、専門家のネットワークにつながりにくいこともあり、安否確認は困難であった。 【考察】危機的場面においても、声をあげることを諦めてしまうこと、声をあげても支援者に届かない状況、その結果、困窮している存在自体が埋もれて見えなくなることが浮かび上がった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染が広がる中、フィールド訪問ができずに、資料収集が思うようにできなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染状況をみながらも、フィールドへの訪問と資料収集を進めて、研究の総括をはかる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染が広がり、十分なフィールドワークができなかったため、予定していた研究費を使えず、次年度使用額が生じた。今年度は、感染状況をみながら、フィールドへの訪問と資料収集を再開させ、そこに研究費を使用する予定である。
|