東日本大震災において、障害児・者がどのような避難行動をとり、どのような被災状況であったかについて、宮城県、岩手県、福島県の震災記録を分析した。その結果、3県に以下のような共通する状況があることがわかった。 避難状況に以下のような共通点があった。まず最初に、避難行動をとるには周囲の援助が必要になるが、それを求める声を出せず、避難行動をとることが難しく、自宅から離れられないケースが多く存在したこと。また、避難行動をとることができて、一次避難所に行ったとしても、避難所のバリアフリーでない環境、あるいは周囲の人との関係性の困難から、避難所に居続けられずに出て行かざるを得ず、そのあと避難所を転々としたり、自宅に戻ったりして、福祉避難所にはつながらなかったケースが多いこと。多くの障害児・者が再び自宅に戻ったが、在宅避難している彼らの実態が行政には把握されずに、支援を受けにくい状況が発生し、安否確認もとれない状況が発生していたこと、である。 このような状況の根底には、障害児・者の「ニーズの表明の困難」と「ニーズが潜在化」する現象を読み取ることができる。障害児・者が「避難しなければならない」というニーズを自覚しても、彼らは「ためらい」や「あきらめ」のために、周囲の他者にそれを表明することは難しい。仮にそこで表明できたとして、避難所に避難しても、避難所という環境から新たなニーズが生じ、その表明の難しさが再度発生する。その結果、彼らは避難所を立ち去り、その後の形跡が消え失せたかのようになる。すなわち、いったん顕在化された彼らのニーズが潜在化することになる。能登半島地震の震災記録はまだ十分出てきてはいないが、いまだに同じような状況が発生している。障害児・者が、安心してニーズを表明できるような社会環境の構築が必要である。
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