本研究は、当初3年間の研究期間で計画されたが、COVID-19流行の影響を受け、2年間の研究期間延長を経て行われた。最終の2年間は、韓国におけるハームリダクションの実験的プロジェクトを中心に調査を行った。2021年度末に、韓国・ソウルで活動するセクシュアルマイノリティのHIV予防にかかわる当事者団体の代表および研究プロジェクト担当者、研究者としてその活動を支援する文化人類学者(延世大学教授Seo Bo-kyeong氏)と情報交換の会合を持った。2022年度は、その時の会合で提供された情報および資料にもとづき、POP(Power of Pleasure)の活動状況を韓国における先駆的な実践例として、調査検討した。結果は、研究代表者の後続科研(挑戦的研究・萌芽21K18460)の2022年度成果と統合し、論文として公刊・公表する予定である。前科研(挑戦的萌芽15K13084)および本科研の成果にもとづく研究代表者の単著執筆、および、研究分担者・池田とともに、現在までに収集した資料・情報にもとづく論文集の執筆を継続中である。また、ハームリダクションを含む多様な回復像を取り扱った書籍を分担翻訳し、2022年に刊行した。研究期間後半は、現地フィールドワークができなくなるなど、研究遂行に大きく影響するさまざまな状況変化があったが、オンラインを活用した研究方法を取り入れ、また、前科研からの成果を単著にまとめる契機にもなった。
|