研究課題/領域番号 |
18K02070
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
東 優子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60330601)
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研究分担者 |
小貫 大輔 東海大学, 教養学部, 教授 (60439669)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | bodily integrity / autonomy |
研究実績の概要 |
「身体の自律と保全(インテグリティ)」を主題とする本研究の初年度は、国際会議への参加などに関連したタイミングの都合により、男児の性器(包皮)ケアをめぐる保健指導に関する研究を重点的に行った。その具体的な内容は、1)文献・資料研究、2)専門家へのコンサルティング、3)男児・成人男性の性器ケアをめぐる意識・態度・経験に関する量的調査、4)国際的なネットワークの構築である。 1)については、「仮性包茎」に係わる保健・医療言説の現状と戦前の日本における医学界における言説を分析した。2)については、現在の「仮性包茎」の保健指導において指導的立場にあり、文献の著者でもある日本の専門家(泌尿器科医)2名にコンサルティングをお願いした。これは研究計画の妥当性の確認および、文献では知りえない情報入手を目的としたインフォーマルな聞き取り調査を兼ねたもので、国内外の動向や研究・実践の潮流を把握することができた。3)男児・成人男性の性器ケアをめぐる意識・態度・経験に関する量的調査については、その第1弾として「日本人男性のペニス包皮をめぐる身体イメージと保健行動に関する研究」を実施することとした。これは、18歳以上の日本人男性を対象として、2年次にインターネット調査として実施するものである。本年度は、①デモグラフィックデータ、②ペニス(包皮)の外見に関する理想と現状、③ペニス(包皮)に関する保健行動で構成される質問票を作成した。 4)では、2019年に開催される2つの国際会議に向けた準備を行った。とくに2019年10月にメキシコシティで開催される、第24回World Congress of Sexual Health(以下、WAS国際会議)については、エントリーした本研究に関する2本の演題が採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「身体の自律と保全(インテグリティ)」を主題とする本研究では、 (A)トランスジェンダーの性別承認に係る手術要件、(B)男児性器ケアをめぐる保健指導を2本の柱としている。当初の計画は、1) 国内外の文献・資料研究(1年目): (A)(B)に係る科学的言説の潮流(現状と実践を正当化するエビデンスの有無の確認を含む)を把握すること、国内外の動向(法律やガイドラインなどのありよう)と政治を明らかにすること、2) 専門家への聞き取り調査(1年度後期に海外調査、2年度前期に国内調査):1)の裏付け作業、および医療保健の専門家とのネットワーキングを通じて、将来的な大規模調査の協働基盤を構築すること、3)量的調査の実施(3年目)としていた。 研究実績の概要でも述べたように、初年度は、国際会議への参加などに関連したタイミングの都合により(B)に関する研究を重点的に進めることになり、これについては当初の予定通りで進んでいる。 また、研究実績の概要では述べなかったが、(A)トランスジェンダーの性別承認に係る手術要件についても、文献研究とそのアウトプットを通じた国内外のネットワークの構築については当初予定どおり進んでいる。とくに日本の「性同一性障害特例法」の問題点について、海外メディア(ロイター)の取材を受け、研究代表者のコメントが記事化されたことが、国際的ネットワークの拡充につながり、今後の研究成果に反映させていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
3年計画の2年目は、(A)トランスジェンダーの性別承認に係る手術要件に関しては、当事者を対象として、「手術要件」の存在が自己決定を含む「性の健康と権利」に及ぼす影響を明らかにするための量的調査の準備を進め、計画どおり3年目の実施につなげていく予定である。 (B)については、初年度に作成した「日本人男性のペニス包皮をめぐる身体イメージと保健行動に関する研究」を実施する。また、4月26日から2日間、英国リーズ大学で開催されたFuture Choices: Keeping Europe Intact主催のA Children's Rights Conference(欧州会議)に参加し、そこで欧米数カ国で研究協力者を確保できたことから、今後、国際比較調査に向けた準備をしていく。国内調査としては、日本人男性を対象とした調査を第1弾として、子育て経験のある保護者を対象とした調査も実施する予定である。10月にメキシコシティ・世界貿易センターで開催される第24回World Congress of Sexual Health(以下、WAS国際会議)では、本研究に関する2本の演題を発表する。 (A)と(B)に共通して、研究班のウェブサイトを開設する予定である。これはおもに、研究成果のアウトプット(調査結果のフィードバックを含む)の場として使用するものであるが、とくに(B)に係わる保健指導・教育・情報を発信し、意見交換をするプラットフォームとすることにより、将来の調査協力へのインセンティブにつながると期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年に参加予定だった国際会議(於 英国・リーズ大学)が、主催者の都合で、2019年4月開催に延期されたため
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