研究課題/領域番号 |
18K02071
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
前田 哲男 山口県立大学, 社会福祉学部, 教授 (70181584)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 公営住宅 / 家賃滞納 / 住宅部局 / 福祉事務所 / 社会福祉協議会 / 中山間地域 / 連携 |
研究実績の概要 |
中山間地域の広がっている地方社会において、セーフティネットとしての市町村営住宅が、住宅部局と福祉関係機関(福祉事務所、社会福祉協議会)との連携によって、その役割を果たしているか否かを検討するため、山口県内の市町の住宅部局と福祉事務所、さらに社会福祉協議会を対象として質問紙調査を実施した。このとき、福祉事務所や社会福祉協議会を対象とした質問紙調査において、住宅部局や家賃滞納者からの相談が、平成28、29年度ともに多くはないという調査結果になっていた。家賃の滞納がないということであれば問題はないが、山口県内の市町の住宅部局への質問紙調査において、ある一定数の家賃滞納者が出現していることを見ると、住宅部局と社会福祉関係機関との連携が十二分に行われているのか疑問の残る結果になっていた。もし、社会福祉関係機関による家賃滞納者への支援活動が活発に行われていたら、さらにヒアリング調査などの詳細な調査によって、どのような支援活動が効果的で適切かといった方向へ調査研究を展開することができたと考えられる。しかし、今回はそうした方向へ調査研究を展開することはできなかった。そこで、有効な支援活動を模索するために、質問紙調査の対象地域を他県に広げた。全国すべての市町村を対象にすることが理想ではあるが、まずは中四国地方の市町村で、平成30年夏の豪雨災害による被害の比較的少ない鳥取県、島根県、高知県の市町村を調査対象に加えることとした。この3県の調査においても山口県と同様に、市町村の住宅部局と福祉関係機関との連携が十二分に行われているのか疑問の残る結果になっていた。これらの調査結果を踏まえ、公営住宅家賃滞納者の生活再建を支援する住宅部局と福祉関係機関との連携のあり方、及び都市での居住福祉政策とバランスの取れた中山間地域での居住福祉政策のあり方について、今後も研究を継続していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
山口県、鳥取県、島根県、高知県内市町村の住宅部局と社会福祉関係機関(福祉事務所、社会福祉協議会)への質問紙調査は順調であった。ただ、住宅部局と社会福祉関係機関との連携が十二分に行われていない地域が多かったために、公営住宅家賃滞納者の生活再建へ向けた支援活動、全世代型で包括的な支援活動のあるべきあり方についての調査研究を展開することができていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の質問紙調査を見ると、住宅部局と福祉関係機関との連携が十二分に行われていない可能性がある。現在の連携状況を明らかにするために、都道府県の住宅部局と福祉部局、さらに都道府県の社会福祉協議会に質問紙調査を実施する。質問項目であるが、現在までの制度改正を見ると、公助としての生活保護に至る前の生活困窮者に対する支援の制度が整備されている。そこで、そうした制度がどの程度有効に活用されているかを調査するため、平成30年度の質問とともに、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」に基づく住宅確保要配慮者居住支援法人や住宅確保要配慮者支援協議会に関する質問、「生活困窮者自立支援法」に基づく支援会議についての質問を加えている。住宅部局と社会福祉関係機関との連携による全世代型で包括的な支援を目指すときに、こうした制度の有効性を確認したいと考えている。ところで、自由が尊重されている現代社会において、日本の住宅政策は持ち家中心主義として実施されてきている。失業して住む家を失った場合等のセーフティネットについて、人々の生存権についての配慮はされているものの、人々の居住権を直接保証する仕組みはない。公営住宅の家賃滞納者の生活再建については、自助だけではなく、公助や共助さらに互助によるべきものと考えられる。また、公営住宅と民間の賃貸住宅との役割分担について、そのバランスが大切であると思われる。さらにこのバランスは、都市と中山間地域とでは異なってくると想定され、質問紙調査やヒアリング調査によって適切なバランスを見出していきたいと考えている。さらに、公営住宅の家賃滞納は税金の滞納とは異なり、民事裁判となる。判例の調査検討を通して、居住権を直接保証する制度策定の可能性や、都市と中山間地域とのバランスのとれた居住福祉政策を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
社会福祉関係機関(福祉事務所、社会福祉協議会)による家賃滞納者への支援活動が活発に行われているという質問紙調査結果であれば、さらにヒアリング調査などの詳細な調査によって、どのような支援活動が効果的で適切かといった方向へ調査研究を展開することができたと考えられるが、それができなかったため。令和元年度は都道府県の住宅部局と福祉部局、さらに都道府県の社会福祉協議会に質問紙調査を実施する。そして、活発な連携が行なわれている都道府県に対してヒアリング調査を実施する。それとともに、公営住宅の家賃滞納は民事裁判となることから、判例に関する資料を収集し、その検討を通して、居住権を直接保証する制度策定の可能性や、都市と中山間地域とのバランスのとれた居住福祉政策を検討していく。
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