研究課題/領域番号 |
18K02072
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
根岸 忠 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (10535777)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 介護労働者 / 外国人 / 法的保護 |
研究実績の概要 |
今年度は2年目にあたることから、前年度に行った文献や統計資料の調査で得られた知見が正しかったのか、研究者や政府機関への聞き取り調査を通じて検証を行った。 具体的には、労働部(日本の旧労働省に相当)や(当該労働者の多くは外国人であるため)労働部の外局であり、外国人労働者の受入れを所管している労働力発展署(勞動力發展署)を訪問し、台湾では居宅介護労働者をどのように保護しているのかについて、聞き取り調査を行った。 同労働者のほとんどは外国人であることから、外国人労働者保護にもからんで政府により対応がなされてきた。具体的には、①労働基準法(勞動基準法)を適用する、②居宅介護労働者を保護する特別法を制定する、③労働力発展署が提示する約款に基づき、労使に契約を締結させるという方策が検討又は実行され、現在、③により保護がなされている。 外国人が圧倒的多数を占める同労働者は、非熟練労働者として位置づけられてきた。しかし、少子高齢化の進展により、今後介護人材の不足が見込まれていることから、立法院(国会に相当)は新経済移民法(新經濟移民法)案を審議している。同法案は、優遇措置の実施をとおして、さらに同人材を呼び込もうとするものである。すなわち、熟練労働者と非熟練労働者の間に新しく、中程度の技術を有する外国人材(外國中階技術人力)という範疇を設け、そのなかには在台6年以上であって、一定の介護技術を有する者につき、永住許可を認める等定めていることから、介護労働者を含む非熟練外国人労働者は定着させないとの従来の方針を一定程度転換させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
政府機関(労働部、労働力発展署)を訪問し、聞き取り調査を行った。近時、労働部内で労働法、労使関係や労働経済等専攻の研究者を集め、居宅介護労働者を保護する特別法を制定した場合にいかなる問題が生じるのかにつき、座談会が数回にわたり行われていた。このように、特別法の制定がこれまで検討されながら、いまだ制定されていない理由や現在どういった形で同労働者の保護がなされているのか、政府の見解を尋ねた。 その上で、介護人材のさらなる受入れを行うための新経済移民法の議論状況について聞き取りを行った。 さらに、國立中興大學の研究会(「興大台日法學研究交流圓卓會」)における講演等をとおして、同労働者の保護につき、台湾人研究者と意見交換した。また、日本労働法学会第136回大会での報告等により現時点での成果報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の政府機関への聞き取り調査で得られた知見がはたして正しいのか、地方政府や当事者(外国人仲介業者、居宅介護労働者の使用者、外国人労働者支援のNGO)に聞き取り調査を行うことにより検証する。 とりわけ、賃金の未払いなどの紛争が生じたときに、地方政府やNGOはいかなる役割をはたすのか、聞き取り調査をとおして明らかにする。
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