研究課題/領域番号 |
18K02074
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
古山 周太郎 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (80530576)
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研究分担者 |
福留 邦洋 岩手大学, 地域防災研究センター, 教授 (00360850)
相馬 大祐 福井県立大学, 看護福祉学部, 講師 (70533199)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 福祉コミュニティ / 自立支援協議会 / 災害時要援護者 / 地域防災 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度の都道府県調査によって抽出された市町村及び圏域の地域自立支援協議会に対して、防災に関する取り組みの実施状況に関する実態を明らかにすることを目的にアンケート調査を実施した。その結果、防災に関する活動は、シンポジウム開催等の啓発活動、防災マニュアルやヘルプカード等の指針作成、安否確認や避難訓練の参加等の訓練、要援護者対策の4つに分かれた。また防災に関する専門部会を組織する協議会では、各種の活動を積極的に実施していた。さらに、それらの活動は、協議会の運営体制と、当事者や事業者及び地域といった対象の違いによって整理できた。活動の評価では、防災に関する意識変化について肯定的なものが多い反面、活動に懸かるコストが課題となっている。また、半数以上の協議会で、防災活動を通じて民生委員や町内会等との関係が構築されており、活動の結果として障害理解などの地域への肯定的な影響もみられた。 さらに、障害者の災害対応プログラムの構築に向けて、仙台市で行われた障害者の災害対応を考えるプロジェクトを対象とした事例研究を実施し、同プロジェクトの意義やそれが福祉コミュニティの構築につながる可能性について検討を加えた。その結果、災害対応プログラムで重要なことは、障害者と地域のひとたちが、共通のテーマとして災害対応の重要性を理解し、避難所や避難所経路のバリアフリーチェックを通じて、地域住民と当事者が一体となって個々の課題への対応を進めていく点であることが把握された。さらに災害対応プログラムを共に考えることで、課題解決に様々な知恵やアイディアが提案され、災害への対応力がついた点が指摘できる。地域社会が障害をもつひとへの理解を進め、当事者が自らの力や役割を確認することなったことは、協働型の防災プロジェクトがもたらす福祉コミュニティの構築の可能性の一端を示していること考察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに国内における障害者への災害対応プログラムの実施状況として、市町村及び圏域の地域自立支援協議会における主体別の活動への評価や課題、意識や行動への影響、対策実施後の新たな取り組み、参画者間の関係の構築状況、活動類型ごとの特徴を整理することができた。当初の計画では地域自立支援協議会への全数調査を企画していたが、防災対策の実施状況の少なさから調査対象を限定したが、活動の実態と課題の把握については有効な結果が得られた。また国内調査で得られた地域社会の役割の重要性を踏まえ、海外での災害対応プログラムの取り組みについては、コミュニティ防災プログラムのなかでの障害者への対策の取り組みに焦点をあてることとした。これにより、当初の計画とは異なる地域での取り組みを対象とすることとしたが、すでに該当する事例の探査と資料調査及び関係者ヒアリングといった予備的調査を終えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は海外での取り組み事例について事例収集及びプロジェクトの実態調査を実施する。その成果をもとに、統合的な障害者の災害リスク減少プログラムの開発を行う。収集した事例については、セルフアセスメント、災害リスクやリソースの共有、訓練トレーニングの3段階に分類し、各事例の内容に応じたワークブックや、訓練シミュレーションツールを作成する。さらに、各ステージにおける当事者や参画者の役割を明確化し、効果的に実施するプロセスのデザインを行う。続いて作成したプログラムを国内で試行的に実施する。参画者は当事者を含め数十名程度を想定している。参加者に対して参加前後にアンケート調査を行い、同プログラムの実施が意識や行動に与える影響を明らかにすると共に、プログラムの改善に向けて問題点を整理する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はアンケート調査の入力のために人件費及びコンピューターの購入を予定したが、アンケート調査の規模を縮小したために、人件費は生じなかった。またそれに伴い作業用のコンピュータの購入を見送ったため。
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