研究実績の概要 |
超高齢化の加速する日本社会において、介護の受給ギャップが増大するなか、介護保険制度は持続可能性の観点からの制度改革が喫緊の課題となっている。本研究では、地域包括ケアシステム構築を目指して進められている介護保険制度改革における介護者支援のあり方を究明するために、保険者として権限の増した市町村(特別区を含む。以下同じ)、ならびに介護の総合相談窓口である地域包括支援センターの役割に着目し、全国規模の質問紙調査ならびにインタビュー調査を実施した。調査の概要と得られた成果は次のとおりである。 質問紙調査は、市町村における介護者支援の取り組み状況を把握することを目的として、2018年度に、郵送法により全国の1,741団体(全数)を対象として実施した。介護者支援事業の推進にあたっては、地域支援事業の再編によって拡充された包括的支援事業や介護予防・日常生活支援総合事業など、地域包括支援センターを中核とする事業間の連携による取り組みの重要性が明らかになった。 同調査結果をもとに、全国的に実施率の低い介護者支援事業に積極的、先進的に取り組んでいる市町村を選出し、担当職員ならびに地域包括支援センターのセンター長等を対象とするインタビュー調査を実施した。本調査は、2019年度に個別面接によって4団体、2020年度に電話調査によって4団体、全体で8団体(4市、3町、1村)の協力を得た。また、2021年度に、電子メールを用いた質問紙による追加調査を実施し、コロナ禍の状況を把握した。 住み慣れた地域での在宅生活の継続の観点から、地域包括ケアシステム構築にあたり、介護者の自助の確立に向けた支援の有効性が示唆された。市町村には、地域包括支援センターを中核とした地域ケア個別会議等に、家族など介護者が積極的に参加できるような支援体制の構築が求められる。
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