研究課題/領域番号 |
18K02085
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研究機関 | 皇學館大学 |
研究代表者 |
鵜沼 憲晴 皇學館大学, 現代日本社会学部, 教授 (80290245)
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研究分担者 |
関根 薫 皇學館大学, 現代日本社会学部, 准教授 (10319395)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会福祉協議会 / 成年後見 / 公的後見 / 包括的支援 / 多重問題世帯への支援 |
研究実績の概要 |
2年目にあたる2019年度は、先行業績を理論仮説とし、また全国社会福祉協議会等による既存の調査結果を踏まえ、全市町村社会福祉協議会を対象とする法人後見実態調査の調査票の発送を行った。先行業績の総括では、世界的な潮流として、後見は代理決定から意思決定支援へと移行していること、また財産管理のみならず身上保護を包括した総合的な支援体制の構築へと昇華していることを押さえた。また、すべての法律行為の代理権限を認容する現行民法の枠の中においても、意思決定支援との運用面での両立は可能であるとの見解が趨勢であることを捉えた。 これらを踏まえ、調査項目として、①後見類型ごとの利用者数、後見開始年、後見受任理由、報酬額、後見受任の方法、後見運営委員会の有無、後見運営委員会の機能、後見業務の予算・支出等の後見業務の実態を明らかにするもの、②社会福祉協議会が後見を担う意義、およびそれがうかがえる事例の概要、当該意義を維持・継続していくための課題、③意思決定支援の現状、意思決定支援を実施する上での課題等の3つを柱とした。2月末に発送し、回収期限を4月末日としている。2020年度は、データ入力、量的分析を行い、社会福祉協議会が法人後見を担う意義について検証していきたい。 また、社会福祉協議会による後見業務に同行訪問させていただき、利用者とのやりとりを録音させていただいた。3事例につき、それぞれ5回ずつ同行訪問させていただいた。1事例1日あたりの平均滞在時間は約30分であった。同行訪問が終了した後、それらをすべて文字おこしし、質的分析を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、2年目で量的調査の実施・分析を終了する予定であった。現在は、調査結果の回収を2020年4月末日とし、分析・考察が9月程度までかかると思われる。しかし、量的調査の遅れは、先行業績の到達点をより的確に捉えるため、および調査項目の厳選化・適正化に努めた結果であり、だからこそ意思決定支援を含む貴重なデータを集積できると思われる。また、考察に9月までを要したとしても、以降の6ヶ月は、報告書をまとめ公表する時間としては不足ないと判断する。さらに同行訪問の質的調査分析はすでにほぼ完了しており、6月の日本地域福祉学会全国大会にて発表する予定である。 以上より、やや遅れているものの、研究目的・内容を達成することは十分可能であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、量的調査については4月末日に締め切ったあとで、データの入力、分析、考察を行っていく。先行業績で得た社会福祉協議会が後見を担う意義の検証とともに、新たなる意義を仮説的に提起していきたい。また、質的調査分析では、意思決定支援を含む後見業務がどのように行われているかを、実際の利用者との口頭でのやりとりから検証できる。ここから、同様に社会福祉協議会を含む福祉専門職が後見を担う意義について再確認していきたい。 以上を明らかにした上で、報告書にまとめ、調査に協力いただいた社会福祉協議会様にお伝えしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由としては、①参加を予定していた日本社会福祉学会全国大会(開催予定地:大分大学)が台風の影響により中止となり、旅費の出費が少なかったこと、②調査の実施が予定より遅れてしまい、データ入力を業者に依頼することが当該年度中にできなかったことの2点が挙げられる。
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