研究課題/領域番号 |
18K02089
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
浜井 浩一 龍谷大学, 法学部, 教授 (60373106)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 少年司法 / イタリア / ダイバージョン / 非行文化 / 非行減少 / 児童福祉 / 少年裁判所 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、日本における少年法改正の議論や少年非行の動向を整理した上で、イタリア少年司法が作られた歴史的背景や少年司法の現状について主として文献による研究を実施しつつ、同時に、イタリア司法省幹部やイタリア少年法の代表的な研究者に対してインタビュー調査を実施し、研究課題の洗い出しを行うことを予定していた。 平成30年度の具体的な成果としては、日本の少年非行の動向を詳細に分析しつつ、少年非行が2003年以降急速に減少している原因について、欧州各国との国際比較を交えながら分析した。具体的には、不良グループの解体や非行文化の衰退など、少年のライフスタイルの変化を中心に分析し、その結果を「季刊刑事弁護」等に論文として発表した。また、海外の学会等においてもオーストラリア・ニュージーランド犯罪学会においてその成果を発表するとともに、欧州評議会においても「Success factors of the Japanese Juvenile Justice system and factors of recent further decreasing of Juvenile Delinquency in Japan 」と題した講演を行った。 さらに、2018年11月にイタリアの少年司法手続と実務についての現地調査をローマおよびボローニャにおいて行い、その結果を「季刊刑事弁護」等に論文として発表した。イタリアの少年司法の最大の特徴は、非行少年の健全育成を実現するために、刑罰を究極まで回避し、少年たちを刑事手続から離脱(ダイバージョン)させることでスティグマを回避することにある。そのために未決段階から少年裁判所を核としてソーシャルサービスなどによる教育的な働きかけが積極的に行われており、少年司法と児童福祉、そして地域社会との連携などの点で日本にとっても参考になることが多い。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
少年非行が減少している原因分析やイタリアの少年司法実務についての現地調査は、当初の予定以上に進んでおり、その成果も『季刊刑事弁護』を中心にすでに複数の論文を発表することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年3月には連携研究者との研究会も実施し、今後の研究の進め方についての意見交換を行った。具体的には、連携研究者と協力してイタリア少年司法の歴史的変遷なども含めて研究を深めるとともに、ソーシャルサービスの役割など児童福祉実務を中心に非行少年処遇の具体的内容についても調査を進めていく予定である。 今後は、これまでの研究結果を踏まえつつ、日本の少年法改正(少年法適応年齢の引き下げ)の動向についても批判的に検討し、将来的な日本の少年司法の在り方について検討する。特に、日本の少年司法とイタリアの少年司法との比較を通して、日本の少年司法の改善点について検討する。これらの結果を踏まえて、2020年度には龍谷大学において日伊シンポジウムを開催する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国内での研究会の参加予定者(研究協力者)が他の要件で出席できなくなり交通費を支出しなかったため。
|