本研究は、今後の日本の少年司法制度の方向性について、イタリア少年司法制度との比較を通して検討することを目的としている。 研究成果としては、まず、日本の少年非行の実態を統計的に分析しつつ、少年法適用年齢引き下げの議論を批判的に検証した。その上で、児童福祉との連携によって脱施設化を進めているイタリアの実情を調査研究することで、日本の少年司法のあるべき方向性について検討を行った。 令和2年度以降も、コロナ禍のため海外調査を実施できなかったことから、研究成果をまとめた論文の執筆に加え、国内外においてオンライン研究集会等で研究成果を報告した。令和3年度は、6月に龍谷大学が主催したアジア犯罪学会のオンライン大会において、研究成果を報告するとともに、令和4年3月には、イタリア・ナポリ少年検察局検事Claudia De Luca氏を招いてオンライン公開シンポジウム「イタリアの実践から日本の少年司法について考える」を開催した。令和4年度は、11月にチューリッヒ大学が主催した「VSJF Conference 2022」に招聘され、オンラインにて研究成果を報告するとともに、令和5年3月にはイタリア調査を再開し、イタリア司法省やベネチア・ボローニャの少年司法福祉事務所等を訪問し、インタビュー調査を実施した。令和5年度は、前年度に実施したイタリア調査の結果をまとめた論文を執筆するとともに、これまでの研究成果をまとめて9月にフィレンツェで開催されたヨーロッパ犯罪学会で報告した。また、令和6年3月に本研究の総まとめとしてイタリア共和国サレルノ未成年(者)裁判所長のDott.Piero Avallone判事を招いて日伊少年司法シンポジウム「イタリア未成年(少年)裁判所から日本の少年司法について考える」をハイブリッド形式で開催した。この日伊シンポジウムの様子は3月31日付の東京新聞朝刊においても紹介された。
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