研究課題/領域番号 |
18K02092
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
畠中 耕 福井県立大学, 看護福祉学部, 准教授 (70348126)
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研究分担者 |
矢上 克己 清泉女学院短期大学, その他部局等, 教授 (00329442)
石坂 公俊 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 准教授 (10438757)
大塚 良一 育英大学, 教育学部, 教授 (60455011) [辞退]
橋本 理子 城西国際大学, 福祉総合学部, 准教授 (70567247)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 方面委員 / 軍事援護 / 救護法 / 戦時災害保護法 / 社会行政 / 方面事業助成会 |
研究実績の概要 |
2022年度は主に御殿場市を対象に史資料調査を実施した。御殿場市立図書館には旧御殿場町及び旧原里村(原里支所)文書が保管されており、戦前期における静岡県社会事業行政の実態を知りうる貴重な史資料と判断される。蒐集できた主な簿冊資料は次の通りである。 『方面委員関係綴(大正13年~昭和5年)』、『方面委員関係綴(昭和6年~昭和8年)』、『方面救護委員関係書類』、『社会事業雑件綴』『方面事業助成会綴』、『方面事業助成会決議書綴』、『常務委員関係綴』、『社会重要書類』、『社会関係綴』、『方面委員関係書類綴』、『方面事業助成会関係書類』、『米価暴騰為窮乏救済に関する書類』、『救護法関係書類』、『救護法に依る報告書類』、『救護関係書綴』、『救護関係雑書類綴』、『救護法関係』、『母子保護重要実施状況綴』、『母子保護関係』、『母子扶助関係』、『戦時災害保護関係書類』、『戦時災害保護雑書類』、『戦時災害保護重要書類』、 『戦時災害保護法例規』、『戦時災害罹災者名簿』、『銃後奉公会雑綴(御殿場町役場)』(以上は旧御殿場町役場文書)。 『方面事業関係綴』、『原里村方面助成会関係綴』、『戦時災害保護法関係綴』、『社会事業関係綴』、『軍事援護相談所関係(原里村銃後奉公会)』、『原里村銃後奉公会婦人相談員綴』(以上は原里支所文書)。 見られるように蒐集できた史資料は戦前期とりわけ大正期から昭和初期における旧御殿場町及び旧原里村における社会事業行政資料で、保存状態も良好である。また上記の蒐集資料の他に『御殿場市史資料所在目録』に掲載されている「高根支所」及び「印野支所」文書の所蔵状況を確認したが、「所蔵なし」とのことであった。2022年度における史資料調査により、当初の研究計画がより一層進捗することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染拡大に伴い研究計画の進捗の遅れが確認されたが、感染収束と延長措置の恩恵にともない当初計画が軌道に乗りつつある。当初は静岡県全域を対象に史資料発掘調査を計画していたが、各市町村の教育委員会及び文化振興課、図書館の協力のもとで事前に史資料の所在を確認することができ、効率よく調査を進めることができた。 静岡県の場合、空襲や大火によって戦前期における県庁文書や都市(静岡市、浜松市など)における行政文書の大半が焼失した。しかし一方で県内の各市町村には旧町村役場文書を中心に多数の行政文書が保存されていることが明らかとなった(実際に『静岡県史』の編纂は旧役場文書が中心となって行われた)。これまで磐田市、菊川市、沼津市、富士市、牧之原市、森町、湖西市(旧新居町)、天竜市、御殿場市を対象に所蔵資料調査を実施してきたが、方面委員や軍事援護関係の簿冊資料が多く残されていた。各資料とも保存状態が良好で「研究実績の概要」でも記したように、戦前期における静岡県社会事業の概要を知りうる貴重な資料と判断される。一方で一般公開を予定して保存されているわけではないため、個人情報等にも配慮を要することが明らかとなった。 さらに静岡県社会事業協会『会報』のほか、静岡県町村長会『静岡県』や大日本報徳社『大日本報徳』といった静岡県社会事業に影響を与えた各種団体発行の機関誌も保存状態がよくほぼ全号を網羅することができた。蒐集済みの史資料を史料批判の作業を通じて統合化した後、史実を確定し論考としてまとめる計画である。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績」の概要でも記したとおり、2022年度は主に御殿場市を対象に所蔵史資料調査を実施した。当初計画では伊豆地方を対象に調査を実施する計画であったが、資料撮影に多くの時間を要したため、足を運ぶことができなかった。幸い延長措置の承認を得ることができたため、2023年度(最終年度)は伊豆地方を対象に史資料調査を実施する計画である。 伊豆地方は日本一の模範村と称された稲取村を要する他、報徳運動が広く浸透した地域として知られている。これまでの調査及び研究から1930年に発生した北伊豆震災の復興経計画として策定された新興精神綱領およびそこから胎生した新興生活館事業が昭和恐慌下の更生運動と歩調をあわせる形で県内に広く普及した。さらに1933年度より福島県で創設された教化町村制度が1931年度より始動した静岡県土方村振興計画を起点としていることは既に指摘されているが、被災地の江間村や北狩野村でも振興計画が展開されている。つまり昭和恐慌期における更生運動の起点が伊豆地方に求められるとの仮説が成り立つ。 以上の仮説を検証するため伊豆市及び伊豆の国市を中心に所蔵資料調査を実施する計画である。同時に一般に社会事業の形成期と目されている大正期における地域の情報を得るため、主要紙『静岡民友新聞』から関係記事を抽出する計画である。さらに1923(大正12)年から『静岡県自治新聞』という名称の新聞が発行されていたことが明らかとなった。同紙は1926年から刊行されていた静岡県町村長会『静岡県』の前身で、静岡県行政の一端を知りうる貴重な情報源と判断される。しかし現時点で所蔵が確認されている図書館等は確認できていない。上記の計画と合わせて情報収集に努める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要でも記したように、本年度は御殿場市立図書館を対象に史資料調査を実施した。当初計画では伊豆地方を対象に調査を実施する計画であったが、予想以上に行政史資料が保存されていたため撮影に多くの時間を要した。そのため当初計画を変更し、延長措置の経過をふまえて2023年年度に実施する運びとなった。また当初計画では公共の交通機関が不備の地域を対象にレンタカーやタクシー等の活用も視野にいれていたが、本年度は活用する機会がなかった。次年度使用額が生じたのは上記理由による。 「今後の研究の推進方策」でも記したように、2023年度は主に伊豆地方を調査対象に史資料調査を実施する計画である。次年度使用額は当該調査に活用する予定である。同時にまだ訪問していない各市町村の史資料所蔵状況を確認しながら、可能な限り史資料収集に努めたい。
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