本研究では、社会復帰における自立の過程を「援助を受ける者」から「援助要請する者」へと変化することと捉え、援助要請行動の促進を切り口に、社会復帰支援モデルを構築することにある。前年度は、少年院在院者を対象にした質問紙調査により、援助要請に影響を及ぼす基本的な要因について検討した。本年度は、少年院教官に対する自由記述調査に基づき、少年の認知する少年院の教官による態度・行動を測定する尺度項目を収集した。続く本調査では、少年院在院中の少年を対象に質問紙調査を実施し、少年の認知する少年院の教官による態度・行動、援助要請における利益の予期、セルフスティグマ、感情抑制、男性役割、悩みの経験、過去の援助要請経験、出院後の教官への援助要請意図などを尋ねる質問紙調査を実施した。共分散構造分析の結果、援助要請意図に対しては、利益の予期、過去の援助要請経験などが正の関連を示し、利益の予期に対しては、少年院の教官による態度・行動が関連を示した。以上から、教官への援助要請を促進するためには、援助要請をすることは有益であるという利益の予期が重要な変数であり、教官の日ごろの関わりによって、この利益の予期を促進できる可能性が示された。 矯正施設退所後の少年を対象としたインタビュー結果を基に、矯正施設退所後の新たなコミュニティに参入するプロセスについて、複線径路等至性アプローチによりひき続き分析を実施し、さらに補足的なインタビュー調査を実施し、論文化し、投稿した。段階を踏んでコミュニティに参入するプロセスがあること、コミュニティ参入を進めることに機能した援助要請の使い方に2種類あることを見いだし、周囲との関係性の受け止め方が、援助要請の使い方の違いを生み出している可能性を示唆した。
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