研究課題/領域番号 |
18K02104
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
河本 尚枝 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (50403499)
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研究分担者 |
牧田 幸文 福山市立大学, 都市経営学部, 准教授 (00555336)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢期 / 移民 / 福祉 / 介護 / その人らしい暮らし |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、資料収集と並行してインタビュー調査など個別に研究を行い、論文の執筆を進めた。 高齢期を迎えた中国帰国者は、現在の生活に対して不満はないと回答したものが多い。しかし、自由記述の分析から現状の生活に満足しているのではなく、永住帰国前の生活水準や経済状況と比較して「良い暮らし」と判断していることが伺える。また、高齢中国帰国者は家族・親族のネットワークの中でサポートを受けることが多いが、インタビュー調査を通じて、永住帰国の時期・年齢、永住帰国時点での支援者の有無やその関わり、子供や孫の現在の経済状況等の複数の要素が高齢中国帰国者の受けるサポートの量・内容・質に影響を与え生活安定や生活課題の低減および解決に関連していることも伺える。 成果発信の機会および社会への還元として、以下の報告会を行った。多文化の背景を持つ高齢者の生活研究会と福山市(北部生涯学習センター)の共催を得て北部生涯学習センター開催された多文化共生講座「満州移住者と中国帰国者の高齢化報告会(2019年11月10日開催)」で報告を行った。研究代表者、研究協力者ともに報告を行い、地域の支援者とともにこれまでの研究成果を支援者及び市民に研究成果を還元した。なお、報告テーマは「中国帰国者のライフコース:高齢期を日本で迎えることについて(牧田幸文)」、「高齢期を迎えた中国帰国者の生活:調査結果からうかがえること(河本尚枝)」である。また、県立広島大学庄原地域連携センター主催の多文化共生シンポジウム「広島県の医療通訳の拡充に向けて 安芸高田市の医療現場から(2020年2月12日開催)」において、調査結果も踏まえつつ「医療通訳への期待と課題-医療サービス・言語・コスト」と題した基調講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度に引き続き、日本国内で中国帰国者へのインタビュー調査を行った。対象が高齢者であり、急な体調変化への配慮や認知状況の変化に伴う調査対象変更も必要となるため計画した人数のインタビュー実施に想定よりも時間がかかっている。インタビューはおおむね終了し、質問紙調査と合わせて分析を進めているところであり、2020年度に学会報告または論文投稿を予定している。 当初計画では2019年度に台湾での生活実態調査を予定していた。台湾の生活状況に合わせて質問項目を修正したうえで2020年1月~3月に実施するべく現地の協力者と調整していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け現地への渡航が困難になったこと、調査協力者の健康に配慮する必要があることから今年度は実施を見送ることとした。2019年度末の時点で新型コロナウイルス感染症の収束時期が不明ため、当該調査は日本と現地の状況を勘案しながら改めて実施時期を決定する。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間中に台湾、韓国、米国での調査を予定しているが、現状では渡航時期を予想することもできない状況である。高齢者を調査対象とする研究であり調査協力者に感染の不安がある状態では調査を行うことも難しい。新型コロナウイルス感染症がいつごろ収束するかによって調査の進捗状況が大きく影響されることが予測される。各国での調査時期については、隔離期間を設けることなく入国可能になること、調査協力者が不安を持たずに調査者に面会に同意をすること、の2点を満たした国から順に実施したい。 国内では、本研究の成果を広く社会に還元することを目的に支援者や実践者等を対象にした調査結果報告会やセミナーを開催する方向である。しかし、これも新型コロナウイルス感染症の感染状況等を勘案しつつ柔軟に時期を設定する方向である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため2019年度に予定していた調査を感染終息後に延期したため自薦し使用額が生じた。 次年度使用額の使用計画については、延期した調査にかかる費用に充当する予定である。
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