研究実績の概要 |
本邦におけるがん罹患数が第一位である大腸癌の手術症例について、長崎県内6施設を中心とした多施設共同研究グループ(NCOG)を組織し、施設毎の患者背景や術式、合併症、専門外来、人的資源、説明に用いる資材等について現況を明らかにするとともに、皮膚・排泄ケア認定看護師との協働によるストーマケア標準化に係る体制を強化した。 令和2年12月までに前向きにNCOGに登録された手術症例数は4,114例に達し、ストーマ造設術や合併症発生に関わる要因をはじめ、様々な臨床研究を行った。症例数が最多であった長崎大学病院においてストーマ専門外来を受診したストーマ保有者266例に関する詳細な臨床データを収集し、データ欠損値のない212例についてロジスティック回帰分析を行った結果、ストーマ周囲皮膚合併症の発生には挙上腸管(OR:3.930; 95%CI:1.520-10.100, p=0.004)とストーマの高さ(OR:0.268; 95%CI:0.134-0.539, p=0.0002)が関連していることが明らかになった。一方、年齢や性別、体格、栄養状態、併存疾患、ストーマの形態、便の状態、ストーマケアの実施者等と、ストーマ周囲皮膚合併症やその他のストーマ関連合併症との間には有意な関連を認めなかった。 地域において推進するストーマケアの標準化を目的として、病院・在宅・介護福祉施設等に所属する看護師92名を対象としたアンケート調査の結果を参考に研修会等で活用する資料を教材として纏めた。多職種間においてストーマケアに関する情報伝達のため必要になると想定される基本的な知識については、1時間半程度の講義形式で収まる資料を作成した。助産師や理学療法士を含む様々な医療従事者に対してレクチャーを行った結果、受講後の知識習得率は16名中13名が100%であり、教材としての有用性が示唆された。
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