研究課題/領域番号 |
18K02109
|
研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
田川 佳代子 (沖田佳代子) 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (10269095)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | オランダ / 社会支援法 / インフォーマル・ケア / ケア・ネットワーク / 介護 / 介護者 / 家族介護 / 介護者支援 |
研究実績の概要 |
オランダの「インフォーマル・ケア専門知識センター」が手掛け、オランダ政府保健福祉スポーツ省の助成により出版された「インフォーマル・ケア・スキャン・エイド」について、介護や福祉の専門職が実践でそのツールをどう用いるか調べた。このツールは、要介護者や介護者が、自らのインフォーマルなケア・ネットワークをマッピングし、構成員を緻密に位置付けるのを補助する道具である。それにより、支援ネットワークのもつ強さや弱さを把握する。この特徴は、介護を必要とする本人と介護者の面接から得られる情報を構造化する方法にあり、ケア・チームを強化・主導し、介護状況の力動を視覚的に把握するためにジェノグラムやエコマップを利用する。利用者のセルフ・マネジメントを中心におき、専門職の記録・保管に志向した発想とは異なる。インフォーマル・ケア・スキャンは、専門職が家族介護者やボランティアと協働するために用いられるツールであり、介護者が直面する負担の軽減を目的とする。そのステップ1は、家族を明確に把握する。ステップ2は、どのような介護が必要とされているかを把握する。ステップ3は、介護者がどのような状態か把握する。ステップ4は、本人を中心とした社会的ネットワークの規模・構造・機能を把握する。ステップ5は、これまでの情報をもとに、介護者が「できること」「望むこと」等を明記する。このステップを通して、インフォーマルな介護者が自らの状況を再認識し、ケア・ネットワークの構築に向け対処できるのを目指す。オランダの社会支援法には、市民自身が自らのネットワークを介護に活用することが明記される。その目的に沿って国、地方政府、専門職から市民に至るまで、一貫した動きのなかで、介護者支援の体制が整備される。日本でも、アセスメント・ツールが用いられるが、セルフ・マネジメントの発想を中心に据えたケア・ネットワークの形成には至っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オランダにおける社会支援法施行後の高齢者を中心とした社会的ケアの現場や、介護者支援の動向について、利用者、その家族、専門職、市民の支援団体等からヒヤリングをする計画であるが、コロナのため、オランダへの渡航を控えてきた。2023年度、それを実施する計画である。また、高齢者が地域での在宅生活を継続していくにあたり、自治体における地域住民等の協働や、専門職の協働について調べてきた。例えば、住民主体のサロン活動と社会福祉協議会の地域担当制導入による居場所づくり、委託型の地域包括支援センターによる認知症高齢者への関わり、民生委員の地域活動と自治体との関わりの変化、コミュニティソーシャルワーカーの個別支援と地域支援、自治体の福祉総合相談等について質的調査研究を行った。未発表のものは、投稿論文査読中である。
|
今後の研究の推進方策 |
居宅介護支援事業所の介護支援専門員にインタビューを行い、ケアマネジメント過程で、家族介護者からの協力を引き出すプロセスと同時に、家族介護者の状態を把握し支援するプロセスについて明らかにする。 また、社会支援法以降のオランダの介護や福祉の状況について、現場での専門職、利用者、ボランティア、支援団体のフィールドワークやヒヤリングを行い、セルフ・マネジメントを中心としたケア・ネットワーク形成やサポートの実際の状況を把握する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
オランダにおける社会支援法施行後の高齢者を中心とした社会的ケアの現場や、介護者支援の動向について、利用者、その家族、専門職、市民の支援団体等からヒヤリングをする計画であるが、コロナのため、オランダへの渡航を延期してきた。2023年度、それを実施する計画である。また、介護支援専門員の家族介護者支援の動きを知る調査を行うため。
|