研究課題/領域番号 |
18K02111
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
田中 聡子 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (30582382)
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研究分担者 |
戸田 典樹 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (70584465)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 居場所 / フードパントリー / 総合相談 / 孤立予防 / 多機能型相談 |
研究実績の概要 |
本研究においては母子家庭の貧困克服にとって、「重要な他者」の関与が有効に機能する要件を提示することを目的とし、そのために重要な他者の定義を示した上で、重要な他者の役割遂行は誰によって, いかなる方法で担われるのかを論じることを目的とした。これまでの研究結果から母子家庭にとっての「重要な他者」は、フォーマルなサポートとインフォーマルなサポートの2つが存在すると考えられる。そこで、2021年度は以下の3つの調査を実施した。フォーマルなサポートとして母子への相談援助者として①市町村の家庭児童相談機能の実態について量的調査を実施した。また、②当事者団体である母子寡婦団体に対して、現状の母子家庭への支援状況を把握することを目的に、行政からの委託事業の実施状況および委託事業以外の自主事業等について量的調査を実施した。 本研究は、「重要な他者」との出会いの場として対象者を限定しない地域に開かれた「子どもの居場所」や「子ども食堂」を対象に事例調査を行い、生活課題の早期発見、予防的支援機能について明示することを目的とした。しかし、感染症対策から母と子を支えるため、従来の子ども食堂や学習支援などの集合型の居場所事業は中断を余儀なくされた。そこで、集合型の居場所には立ち寄れない母と子の孤立の改善と困窮状況の改善のため、新たな取組としてフードパントリーやテイクアウト型の子ども食堂に転換する団体が登場した。この活動は瞬く間に広がり、母子を支援する1つの活動として期待されるようになっている。そこで、③フードパントリーに着目し、実施者と利用する母親への個別インタビュー調査を実施した。フードパントリーはフードセキュリティの機能だけでなく、子ども食堂や学習支援事業よりさらに敷居の低いアクセスしやすい場であることが明示された。また、継続して実施することにより、顔の見える関係性が構築できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により、個別インタビュー調査の実施が遅れている。母子家庭の母親へ直接インタビューを行い、子育てと仕事の両立を困難にしている要因やフォーマル・インフォーマルなサポートの活用状況や社会資源の活用を阻害しているものは何かを把握することが重要である。しかし、感染症対策としての自粛は母と子の生活に大きく影響しているため、調査への協力および日程調整が難しい。加えて、移動の自粛等も影響した。母子を支えるNPO法人や社会福祉法人などの民間団体も活動の自粛を余儀なくされており、調査活動が難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年は新型コロナウイルス感染症の影響で個別インタビュー調査はやや進捗状況に遅れを生じた。しかし、市町村子ども家庭相談に対しては、市町村の家庭児童相談員を対象に量的調査を実施できた。今後は分析を進めて、計量調査で明示された家庭児童相談機能について、いくつかの家庭児童相談室へ事例調査を実施して、家庭児童相談員が母と子にとって重要な他者の機能を果たすための要件を析出したい。また、遅れている個別インタビュー調査においても感染症対策に配慮しつつ、実施していくよう計画している。ただし、当事者である母親は平日は仕事をしており、休日の都合がつく時間を調整していくため、工夫して活動を再開している支援団体やコロナ禍での母子支援としてフードパントリーを実施している団体と連携し、インタビュー調査を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年に実施できなかったインタビュー調査を実施するために旅費およびインタビューデータのテープ起こし、および調査対象者への謝金が生じます。また、2021年に実施した計量調査の分析を通じて専門的知識の提供を受けるための旅費と謝金および学会報告を行うための旅費や学会参加費などが必要となる。
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