研究課題/領域番号 |
18K02115
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研究機関 | 共栄大学 |
研究代表者 |
宣 賢奎 共栄大学, 国際経営学部, 教授 (90382796)
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研究分担者 |
西下 彰俊 東京経済大学, 現代法学部, 教授 (80156067)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エリアマーケティング / 商圏分析 / 地域差 / 介護保険制度 / 長期療養保険制度 |
研究実績の概要 |
韓国における介護サービスの供給状況と地域差を検証すべく、「老人長期療養保険統計年報」を用い、229自治体の介護事業所数を65歳以上の高齢者人口でウェイトづけし、可及的に日本と比較しながら検証した。そのうえ、2009年12月と2018年12月時点の介護事業所数、サービス提供人員数等を比較検討することで介護サービス供給の地域差の拡大・縮小の状況を明らかにした。研究の結果、韓国の介護事業所の増加率は日本に比べて緩やかである、都市部の多い自治体は介護保険施設が少なく、中山間地域の多い自治体は在宅介護事業所が少ない、介護事業所の約半数が首都圏に集中している、在宅介護事業所に比べて介護保険施設の地域差が相対的に大きい、昼夜間保護事業所は地域差が解消されつつあるが、訪問看護事業所は依然として地域差が解消されていない、サービス提供人員の規模が介護サービス供給に影響を及ぼしているなどの結果が得られた。上記の研究結果を踏まえ「韓国における介護サービス供給の地域差」という論文を執筆した。 また、日本における介護サービスの供給状況と地域差についても検証すべく、埼玉県を研究対象地域とし、埼玉県の72市区町村における訪問介護事業所および通所介護事業所の新規開設の供給余地を明らかするとともに、供給余地に影響を及ぼす需要決定因子を明らかにした。研究成果として「埼玉県における訪問介護サービスのエリアマーケティング」および「埼玉県における通所介護サービスのエリアマーケティング」という論文を執筆した。両研究において、人口密集地域、交通の利便性が高い地域ほど介護サービスの供給余地が大きく、平均世帯人員が多い過疎地、山間部の地域ほど供給余地が小さいことが明らかになった。介護サービスの需要決定因子は高齢単身世帯数、一人当たりの課税対象所得、既存の介護保険事業所数、平均世帯人員数、一般病院数が考えられるという結果も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の拡大研究として、今年度も介護サービス需給状況の可視化のためのマッピング、分析対象地域における介護サービス需給分析と供給余地の可視化を目的とした研究を遂行した。研究実績の概要に記したように、分析対象地域である埼玉県の72市区町村における訪問介護サービスおよび通所介護サービスの需給状況をマッピング化した。 しかし、介護サービスの今後の需給予測に関する研究は、主成分分析、クラスター分析、ハフモデル分析の分析手法がまだ確立できず、予定通りの研究を進めることができなかった。また昨年同様、韓国およびスウェーデンにおける介護サービス供給の地域差を明らかにするための現地調査はコロナウイルスの感染拡大により実施できなかった。国際介護政策セミナーにおける研究成果の発表を通したエリアマーケティングの有効性の検証も叶わなかった。今年度の研究課題については、令和3年度の研究において取り組むことになるが、現地調査はコロナウイルスの感染状況によっては実施できない可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は令和2年度に実行できなかった介護サービスの今後の需給予測に関する研究を引き続き進める。具体的には、多変量データを統合して新たな総合指標を作り出す主成分分析、関連性の高い統計指標でグルーピングするクラスター分析とハフモデル(Huff Model)分析の分析手法の確立を目指す。 また韓国における介護サービスの供給状況と地域差の検証を続ける。コロナウイルスの感染拡大により実施できなかった現地調査を通して介護事業所の立地状況(韓国では都市部の雑居ビルに事業所を開設している場合が多く、住所地だけでは立地状況の把握が困難)についても精査する。現地調査は、日本における介護サービスのエリアマーケティング手法の韓国への適用可能性を探ることに主眼をおいて行う。スウェーデンにおける介護サービスの供給状況と地域差の検証も行う予定であるが、これについては研究分担者の西下彰俊教授が行う予定である。 令和3年度は本研究の最終年度であることを踏まえ、韓国とスウェーデンの両国において国際介護政策セミナー・シンポジウム等を開催し、介護サービスの供給状況と基盤整備のためのマクロ的視点でのエリアマーケティングの有効性を検証するとともに、持続可能な長寿社会に向けた介護サービスの基盤整備に関する提言と研究報告を行う予定である。ただ、コロナウイルスの感染拡大が終息しない場合は中止せざるを得ないと思われる。その場合は、論文の公表を通して研究成果を報告したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度同様、コロナウイルスの感染拡大により、予定していた韓国の介護サービス供給の地域差に関する調査ができず、研究旅費の支出がほぼできなかったのが最大の理由である。それに付随する形で、研究補助費(資料収集・データ入力等の補助)および会議費(会場借用・飲料等)の支出が少額となった。
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