研究課題/領域番号 |
18K02119
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
金子 光一 東洋大学, 社会学部, 教授 (30255153)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 相互承認 / ロバート・オウエン / 協同社会 / アソシエーション |
研究実績の概要 |
2020年度は、アダム・スミス(Adam Smith)とG. W. F. ヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel)の理論的枠組みを用いて、ロバート・オウエン(Robert Owen)の「協同社会論」における「相互承認」の場に関する思想の検討を行った「ロバート・オウエンの『相互承認』の場に関する思想」『社会事業史研究』(第57号)社会事業史学会<2020年3月>を踏まえて、相互に認め合う社会に求められる価値に焦点を当てて検討を行い、その成果を「相互に認め合う社会の構築に関する一考察―オウエンの思想を基盤として―」『福祉社会開発研究』(No.13)東洋大学福祉社会開発研究センター<2021年3月>として公にした。これは、交付申請書に記載した「課題5.オウエンの思想の現代的有効性に関する検討」に該当するものである。 2020年度の考察の結果、オウエンが構想した協同社会は、道徳的徳性を身につけた構成員が、「相互承認」のもとで倫理規範に基づいて行動する場であったことが改めて確認できた。また、「相互承認」の場の思想とオウエンが重視した道徳的徳性の教育とは密接な関係があることも判明した。さらに、オウエンの「すべての人が幸福を永久に所有できる方法は、各人の利益のためにすべてのものが結合し協力することである」という思想が、福祉サービスの「需要者」「供給者」双方の利益のために必要な条件である「公平性」と「相互性」を有していたことの証左であることが判明した。このことは、「国家を拒否する社会主義(=アソシエーショニズム)」に立脚していたオウエンの思想が、「公平性」の概念と並んで「相互性」の概念に注目していたJ.ロールズ(J.Rawls)の「正義論」と親和性があることを示している。これらの知見を踏まえて、2021年度はこれまでの研究成果をまとめ公表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、最終年度として、これまでの研究成果を取りまとめて報告書を作成し、印刷刊行することを考えていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、最終的に必要な資料収集・現地調査が困難となり、大幅な計画の見直しが求められ、研究期間の1年間の延長を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の蓄積によって、オウエンの「相互承認」の場の思想と教育論との関係を明らかにするためには、幼児教育学・保育学からのアプローチが不可欠であることが明らかになった。そのため、2021年度に幼児教育学・保育学の視点から改めて「相互承認」の場につながるオウエンの教育論を検証できる研究分担者を新たに追加する。それにより、研究代表者が目指すオウエンが重視した「相互承認」の場の思想と道徳的特性の教育との関係性がより明確になり、大きな研究成果が期待できる。そして2021年度末には、それらすべての成果をまとめて公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で支出実績がなく「次年度使用額」が生じたが、2021年度は、研究分担者と連携を取り合い、計画的な執行を行いたい。最終的に必要な史資料の購入、インタビューに伴う謝金、研究報告書の印刷(コピー)代などの使用を考えている。
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