研究課題/領域番号 |
18K02119
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
金子 光一 東洋大学, 社会学部, 教授 (30255153)
|
研究分担者 |
山本 真実 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 教授 (20337695)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 相互承認 / ロバート・オウエン / 価値 / 相互性 / 福祉思想 / 思想史 |
研究実績の概要 |
本研究の最終的な目標は、ロバート・オウエンの協同の理念に基づく思想と新しい社会統合モデルである「市民的統合」の関係性を明らかにすることである。「他人事」になりがちな地域づくりを地域住民が自分のこととして主体的に取り組んでいく仕組み(例、「見守り」支援システム等)の構築が求められている今日、オウエンが重視した能動的義務について検証することは重要な意味をもつと考える。また、オウエンの権利に関する見解や協同の理念に基づく実践は多くの示唆を与えるものである。そこで2021年度は、「相互承認」の概念を中心にオウエンの思想の現代的有効性を検証した。特に「価値」を横断的にみるのではなく、時間軸で捉える重要性と、「個人」と「社会」のありようを相互性の視点から検証する必要性を明らかにした。その成果の一部は、社会事業史学会の機関誌『社会事業史研究』(第60号)「社会福祉史研究に関する一見解―『価値』の変遷を踏まえた研究の必要性―」および東洋大学福祉社会開発研究センター編『認め合い、支え合う福祉社会の近未来』(中央法規)の序章「認め合い、支え合う社会を目指して」で公にした。2022年度は福祉思想史に関する考察をさらに深め、「新たな価値」に基づいた社会を変革する思想について、オウエンを素材として追究し、査読付きの学会誌等でその成果を明らかにしたいと考えている。また、戦後日本の社会福祉の歴史(政策・実践・運動)を振り返り、福祉思想史の視点から地域のつながりに関する政策構想の理論的枠組みに関する検討も併せて行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により、計画申請時に予定していた現地(イギリス)でのヒアリング調査などを行うことができなかった。また、2021年12月本務校の常務理事に就任したことで、新たな学内業務を行う必要性が生じ、当初予定していた研究時間をうまく確保することができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
「新たな価値」に基づいた社会を変革する思想について、オウエンを素材として追究したいと考えている。また、日本社会における地域のつながりに関する政策構想の理論的枠組みに関する検討も併せて行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、新型コロナウイルス感染症の影響でイギリスへの渡航が制限され、予定していた旅費の執行およびヒアリング調査の対象者に対する謝金の支出ができなかった。オンライン会議や研究会等の代替措置で対応できる部分もあったが、やはり現地調査でなければ収集できない史資料などもあり、それらを取り寄せるための送料等が次年度生じると考えられる。また、次年度は、国内(東北地域)で現地調査を行うことを計画している。相互承認の場の形成のための人材養成に早くから取り組んでいた青森県現業員協会を中心に、現地でのヒアリング調査、史資料収集を実施する予定である。
|