2023年10月15日、武蔵野大学で開催された一般社団法人日本社会福祉学会第71回秋季大会の歴史分科会において、本研究の集大成となる報告「ロバート・オウエンの思想を通じた「相互承認」の場の形成に関する研究」を行った。そこではオウエンが、「相互承認」の場の構築には、市民としての責務を重視し、共通の価値・規範を身につけた市民の力と、社会環境が不可欠であることを見出していたこと、また彼はそのような見解に基づいて、協同社会構築のための実践を展開し、新たな価値を創造しようとしたことを明らかにした。 また、2024年3月9日には、東洋大学福祉社会開発研究センターの年度末シンポジウム「理論的に『相互承認』の概念を掘り下げる」において、歴史的視点から「相互承認」の場の形成に関する研究成果の発表を行った。シンポジウムでは、哲学的視点、法学的視点、倫理的視点から「相互承認」が取り上げられ、福祉社会における新たな価値の創発と支援システムの構築を目指す理論的な討論を行うことができた。 さらに、本研究の成果を取りまとめた論文 「ロバート・オウエンの思想を通じた『相互承認』の場の形成に関する研究」(pp.47-54)を2023年3月刊行の『福祉社会開発研究』(東洋大学福祉社会開発研究センター)に掲載した。本論文では、協同社会を目指したオウエンの思想には、多様性の間の対話を重視して、そこで暮らす一人ひとりの福祉と利益を増大させるための「市民的統合」モデルの原型が含まれていたこと、また「道徳的徳性」を身につけた構成員による人倫的な協同社会が、すべての人に利益を与え、幸福にするための条件となる「相互承認」の場として機能を有する形で構想されていたことを明らかにした。
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